第15章 3対3 + 1
何を言おうと、暴れようと、影山は私を降ろすことなく足を進め、なぜか菅原先輩の前で足を止めた。
影「すみません、菅原さん。この泣き虫の暴れん坊、よろしくお願いします」
そう言って影山は、そこで初めて私を地に降ろし、菅原先輩の方に私を押しやる。
菅「よし、頼まれた!」
笑いながら言って、菅原先輩は菅原先輩で私が飛び出していかないように腕の中にそっと閉じ込めた。
何となく、怒られるかと思い、そうっと菅原先輩の顔を除き見ると、そこにはなぜか、妙にニコニコした菅原先輩がいた。
菅「おかえり、紡ちゃん」
そう言って、腕の中に閉じ込めたまま、頭をポンポンする。
『菅原先輩・・・あの、試合止めてしまって、すみませんでした。つい、カッとなってしまって』
しどろもどろになりながら謝ると、菅原先輩は、
菅「うん、確かに試合の途中ではあったから、何ともないよ!とは言えないけど、でも、紡ちゃんが2人を大切に思っている事は、ここにいる全員がよーく分かったから」
自業自得だけど、そんな風に言われると・・・顔が上げられない。
うぅ・・・と小さく唸りながら両手で顔を隠した。
“ ピッピッ ”
突如、警告のホイッスルが鳴る。
思わずその音の方を向くと、恐らくマネジャーだろう女の先輩がじっとコチラを見ていた。
菅「なんだよ~清水、オレに警告出すなよ~」
菅原先輩に“ 清水 ”と呼ばれた先輩は、ホイッスルを外し小さく息をついた。
清「菅原、その公開セクハラ、そろそろやめてあげて。かわいそうだから」
ポツリと、でもキッパリと話す清水先輩に、菅原先輩はバッと私を解放し、お手上げと言わんばかりに頭を掻いていた。
澤「続き、始めるぞ!」
澤村先輩がパンッと手を叩き、空気が変わる。
菅原先輩から解放された私は、先ほど放り出したノートを持ちながら椅子に戻る。
影山は日向君に歩み寄り、日向君もそれに気づいて体を向けた。
影「さっきの早いトス、またやるぞ。お前は出来るだけ早く、そして高く飛べ」
日「・・・わかった」
それだけ打ち合わせると、試合開始のホイッスルに合わせて相手チームからサーブが打ち込まれる。
田中先輩がそれを受け、影山に繋ぐのと同時に、日向君がスパイクを打つために助走に入り、飛んだ・・・
?
影山の早めのトスは、見事なまでに日向君が空振りする。