第15章 3対3 + 1
影「あぁそうだ・・・トスを上げた先に誰もいないっつうのは、心底怖ぇよ・・・」
・・・・・・・・・
影山の心の痛みを、初めて目の当りにした瞬間だった。
日「でもそれ、中学の話でしょ?オレには関係ない。それより、どうやってお前をぶち抜くかだけが問題だ!」
日向君の言葉に、その場の空気がガラリと変わった。
影「日向・・・?」
日「月島に勝って、ちゃんと部活入って、影山は正々堂々セッターやる!
そんでオレにトス上げる!それ以外になんかあんのか?!」
日向君の、純粋で、それでいてひたむきな思いに胸が打たれた。
月「気合いで身長差は埋まらない。努力で全部何とかなるとおもったら・・・大間違いなんだよ!」
月島君のサーブが孤を描く。
それを田中先輩がキレイにレシーブし、影山へと送る。
どっちに打たせる?!
ここは正攻法で田中先輩に!
影山も同じ様に思ったのか、トスのフォームはレフト側に向けられる。
影「田中さ・・・」
その時、小さな影が素早く動く。
日「影山!!」
声に釣られて、その姿を追う。
見上げるほどの高さに、大きな翼を広げたかのように高く飛ぶ日向君の姿があった。
日「オレはいるぞ!!!」
レフトに向けかかっていたトスが、日向君の方へと急速に方向転換する。
そのまま日向君がスパイク?!
・・・ぽふっ・・・テーンテンテン・・・
・・・アレ?
日「あっぶねぇ、空ブルとこだった・・・アウトだけど・・・
」
影「お、お前!何をいきなり?!」
影山がギュイっと体の向きを変え、日向君と向き合う。
日「でもちゃんとボール来た!中学の事なんて知らねぇ!でも、オレにとってはどんなトスだって、ありがたーいトスなんだ!オレはどこにだって飛ぶ!どんなボールだって打つ!だから!・・・オレにトス!持ってこい!!!」
その日向君の言葉に、思わずみんな笑みが浮かぶ。
うん・・・そうだよね日向君。
過去は過去の話。
例え影山が異名を持つセッターであっても、それは今は関係ない。
それに早く影山自身が気付いて、それで乗り越えることが出来るなら・・・
きっと2人は凄い、攻撃力を生み出せるかもしれない。
そして、その時は私も近くでそれを見ていたい・・・
田「おい?!オマエら、クイックつかえんのか?!」