第15章 3対3 + 1
でも、日向君は私と違って、努力で伸ばせない身長をカバーするかのように、俊敏さとバネを兼ね備え、それが武器になっている。
頑張れ!
私は何度もブロックに阻まれ続けてもスパイクを打つ日向君を見ていた。
記録を取りながら、少し肌寒さを感じる。
家を出る時に、上着を1枚持ってくればよかった・・・と後悔しながら両腕で体を包んでみる。
そんな事しても肌寒さは変わらないか?と思い直し、再びペンを握った。
縁「もしかして寒い?」
ふいに声をかけられた方に顔を上げる。
『あ、いえ、大丈夫です。体育館の温度に慣れてくれば、きっと・・・』
そう返していると、縁下先輩が自分が着ているジャージの上着を脱いで、私に掛けてくれる。
縁「これで良かったら着てていいよ?」
『えっ!それは申し訳ないので、私は大丈夫ですから』
いま掛けられたばかりの上着を掴み、外そうとすると、
縁「あ、俺なら全然平気だから。むしろ暑いくらいだし?だから、ね?」
穏やかに、そしてNOと言えない感じでやんわり説得されてしまう。
縁下先輩って、何だか桜太にぃみたいだな・・・
桜太にぃも、同じように穏やかに微笑みながら、いつも私を説得してくる。
そんな風に考えると、逆らえない自分に笑ってしまう。
『すみません・・・それじゃ、ありがたくお借りします』
折角の申し出でもあったので、あまり意固地になって突っ返すのもと思い、椅子から立ち上がり袖を通す。
うわぁ、サイズ大きいなぁ・・・
縁下先輩もそれなりに長身であった為、私がそれを来てみると、何だかお父さんの服を子供がイタズラに着ているかの様なサイズ感。
更にファスナーを閉じると、まるでそのジャージ1枚しか来ていないかにも見えた。
私にも、もう少し身長あったらなぁ・・・それを再認識できるサイズ感だった。
そんな事を考えている間にも、日向君のスパイクはことごとく止められていた。
遅れた分を取り戻すかの様に記録を付ける。
また、ブロック・・・
月「さっきからブロックに掛かりっぱなしだよ?ほらほら、王様のトスやればいいじゃん?敵を置き去りにするトス、ついでに味方も置き去りにしちゃうやつね」
コイツ、また・・・!
影「早い攻撃使わなくても、勝ってやる・・・」
ポツリと影山が放ち、サーブを打つためボールを掴み移動する。