第15章 3対3 + 1
そう感じて、影山を見る。
背中を向けていて表情は見えないけど、握られた手に力が入っているのがわかった。
山「ちょ、ツッキー、聞こえてるんじゃ?やばいよ・・・」
月「聞こえるように言ってんだ。・・・冷静さを欠いてくれるとありがたいなぁ~。特に、家来たちに見放されて、独りぼっちになっちゃった王様も見ものですしね?」
澤「ははっ、月島・・・いい性格の悪さしてるねぇ」
ほんっっっとに、私もそう思いますよ、澤村先輩・・・
私が当事者だったら、もしかしたら逆上して怒りまくっているかも知れない。
・・・と、そこまで考えて、それじゃ慧太にぃみたいだと自制する。
田中先輩も、こんなふうに煽られたら黙っていないんじゃ?と顔を上げ、その姿を探す。
見ると体をくねらせながら影山と日向君の方へ歩いていた。
田「ねぇねぇ?今の聞いたァ?あ~んなこと言っちゃって。月島くんてば、もぅ、ホ~ント・・・すり潰す!!!」
田中先輩・・・顔怖いですよ・・・
でも・・・、是非、すり潰してやりましょう!
私は今1度ペンを握り直し、ノートに目を向けながら口元をほころばせていた。
審判役の先輩が鳴らすホイッスルの音を合図に、遂に3対3の試合が始まる。
サーブ権を譲り合いながらも、1点ずつ試合が進む。
向こうチームが打つサーブを、田中先輩が上手く拾い、影山がトスを上げる。
それに合わせて日向君が走り込んで飛ぶ。
来た・・・・・・
日向君の高校バレー初のスパイク・・・
・・・!!!
ブロック高い!!
日向君の初スパイクは、月島君による、高い高いブロックに阻まれ、ネットを越えることを許されなかった・・・
その瞬間、時間が操作されているかの様に、ゆっくりと、その、光景が・・・流れて行った。
静まるコート内に、弾き落とされたボールの音だけが虚しく響く。
最初に口を開いたのは、月島君だった。
月「この間もビックリしたけど、キミ良く飛ぶねぇ、それであとほんの30cm身長があれば、スーパースターだったのにねぇ・・・」
そのひと言に、日向君の顔が曇る。
身長があれば・・・それは日向君がずっと抱えていたコンプレックスでもあり、そして私だってずっと思っていた事・・・。
どんなに努力しようとも、埋まらない心のスキマを、容赦なくつついてくる。
ただ、悔しかった。