第5章 霹靂
「あ~あ、もう紡ちゃんちに着いちゃった」
「何で毎回お前が残念がるんだよ」
「え~?岩ちゃんは残念じゃないのかな?」
「うるさい黙れ」
ホントに残念そうに言う及川先輩に、私はいつも笑ってしまう。
「練習で疲れているのに、いつも送ってくれてありがとうございます。でも・・・ちょっとの時間でも一緒にいられて嬉しいです」
言葉に出すのはなかなか照れてしまうけど、でも、ホントの気持ちだから。
だから、ハジメ先輩と及川先輩の正面に立ち、感謝の気持ちを込めてお礼を言った。
「岩ちゃん・・・」
「・・・あ?」
「これは、凄い破壊力だね・・・」
「あ、あぁ・・・」
2人して固まってしまったので、私は何かおかしな事でも言ってしまったのかと思い慌てて何か言い繕うとすると、ハジメ先輩がいつものように私の頭にポンッと手を乗せた。
「明日から合宿入ってるから新学期まで会えないけど、勉強しっかりな」
『はい!ハジメ先輩も頑張って下さい!』
「じゃあな」
「じゃあねぇ~」
そう言ってお互い手を振り合い、ハジメ先輩と及川先輩は背を向けて歩いて行った。
明日から合宿って先に知っていたら、もっといろいろ準備出来たのにな・・・そんな事を考えながら角を曲がって行く2人の後ろ姿を見ていた。