第5章 霹靂
最後の大会となったあの日から1ヶ月経ち、夏休みも終盤に差し掛かった。
ハジメ先輩は・・・というと、やはり高校生の部活ともなると、夏休みの間は普段の通常練習に加えて、大会に、地方遠征に、合宿に・・・の盛りだくさんなスケジュールで多忙を極めていた。
かくいう私もこれから始まる受験戦争の為に、塾の夏期講習のかけ持ちをしたりして多忙となっていた。
かといって、お互いすれ違ってばかりいる訳ではなく、ハジメ先輩の練習が終わる時間が私の夏期講習の終わる時間と近かったりすると、少し遠回りになる事も気にもとめず、迎えに来てくれて家まで送ってくれた。
大概そんな場合の時は、なぜだか及川先輩も一緒の事が多く、
「及川テメェ、なんでいつも着いてくんだよ」
って、ハジメ先輩がふてくされながらいうと、
「岩ちゃんがわかりやすいんだよ~。オレには何でもお見通しィ。そ・れ・に、紡ちゃん独り占めズルイ~!」
「はぁぁぁぁ!!いい加減にしねぇとマジでぶん殴るゾ!」
と、いう言い合いを繰り返しながら3人で歩いている・・・の、繰り返しで。
家に着いてしまう迄の、ほんの数十分・・・。
気軽にいつでも会える訳ではない私にとって、それはホントに貴重な時間であり、そして、同じ時間をハジメ先輩と共有出来るということが何より嬉しかった。
高校生と中学生。
まさか付き合うことになるなんて夢にも思っていなかった頃、どうして私を選んでくれたのだろうかと不思議に思っていた。
でも、もちろんそんな事はハジメ先輩に聞けるわけもなく、私は少しでもいいからハジメ先輩につり合う大人にみえるように背伸びしなければと焦ったりもした。
でも、そんな気持ちも簡単にバレてしまい大笑いされたり・・・。
・・・ありのままのお前だから好きになったんだ。別に着飾ったり背伸びなんてしなくていい。焦らなくたって、俺らもいつかオトナになる日がきっと来る。それがいつかはわかんねーけど、俺たちは俺達らしいペースで、ゆっくり歩いてればいいんじゃねぇ?・・・
いつだったか、歩きながらそう言ってくれたハジメ先輩は、とてもオトナに感じた。
同じペースでゆっくりと歩いてれば・・・ほんの些細な事でも、少し先の未来に2人が一緒にいられる事に心が温かくなった。