第14章 眠れぬ夜と揺れる思い
慧太にぃはカウンターにグラスを置き、片手でそっと肩を包みながら、頭をポンポンとする。
慧「お前なぁ、仮にもお年頃の女子が・・・ま、オレらだけなら、いいか。頼むから他所ではやってくれんなよ?」
『そんな事しないよ。たまに、されるくらい』
無意識にそう答えていた。
・・・ガタッ
桜「あつっ!!」
ビックリして振り返ると、桜太にぃが鍋肌触っちゃって、と指先をフゥフゥする姿が目に入る。
大丈夫?と声をかけると、平気だからと返され、代わりに慧太にぃに頭を鷲掴みされた。
『痛い痛い痛い!もぅ、なに急に!』
慧「なんか今、神様からオレに紡の頭を鷲掴みしろというお告げが」
『そんなわけない!!もう、慧太にぃのバカ! 』
頭を擦りながら桜太にぃの背中に隠れ、ベーっと舌を出した。
それから3人でソファーに戻り、それぞれ飲み物を飲み談話をした。
会話が途切れ、急に静かになったのを見計らって、桜太にぃが問いかけてくる。
桜「紡、心配する事は、何もないと思うよ?」
!
何もかもを見透かされているかの様な桜太にぃの言葉に、視界が滲んでくる。
『でも・・・』
慧「お前、今日までのレシーブ練習が終わったら、アイツらとの関わりがなくなると思ってんだろ?」
そんな事まで見抜かれてるとは思わずに、ただ瞬きを繰り返す。
次第に涙がこぼれ落ち、私はずっと思っていた胸の内を明かした。
ポツリポツリと打ち明けている間、ずっと桜太にぃは私を包み込んでいて、慧太にぃは私の言葉を聞きながら、相槌を打っていた。
桜「紡はさ、いろいろと難しく考えすぎちゃったんだよ。それに、小さい時から我慢する事を覚えちゃったから、外では絶対に弱音は吐かないでしょ?だから、色々と溜め込みすぎて、時々こうやって爆発しちゃう」
慧「そうそう、それも桜太にだけな?オレだって頼っていいんだぜ?」
場の空気を変えようと、慧太にぃが茶化しながら言った。
桜「爆発するのは、いい事なんだけどね。でも、同じ時間を共有している友達とかにも、小出しでいいから話してみるのもアリだとおもうよ?・・・例えば、ほら、影山君や日向君なんてどう?」
不意打ちに出た2人の名前に驚き、顔を上げる。
『どうして、その2人?』
私がそう返すと、桜太にぃも慧太にぃも1度視線を合わせて笑う。