第14章 眠れぬ夜と揺れる思い
『目が覚めた時に、隣に寝てる慧太にぃがいた時の私のビックリ度、理解してよね』
慧「あぁもう、ハイハイ!」
桜「あの時の紡の悲鳴って言ったら・・・」
クスクスと笑う桜太にぃを見て、ホントだよねと返しながら私はソファーから立ち上がった。
慧「ん?どこいくんだ?」
『なんか温かいの飲みたいから入れてくる』
そう言い残してキッチンへと入る。
目的の物が入れてある棚をチラリと見上げ、何でこの家は、高身長の人間がキッチンに立つことが前提で作られたのか・・・と思いながら踏み台を持ってくる。
家族で唯一おチビさんの私に、慧太にぃが暇を見つけては少しずつ作ってくれた踏み台。
これがまだ絶妙な高さで使いやすい。
『よいしょ、と』
踏み台に登り棚に手を伸ばすと、私の背後から被さるようにスッと手が伸びてきた。
桜「ミルクティーでいいのかな?手伝うよ」
そう言って桜太にぃが材料を取り出し、踏み台から降りる私に手を差し伸ばす。
そう、この手はいつだって私が困った時に差し出されてきた。
『桜太にぃ、なんかいろいろありがとう・・・』
それだけ言うと、桜太にぃはニコッと笑いミルクティーを作り始めた。
仕上がったら持っていくから、と、ソファーに戻る事を勧められたけど、何となく桜太にぃのそばに居たくて、その場に留まった。
小鍋にミルクを注ぎ、コンロにかけたのを確認してから、桜太にぃの背中にそっと抱きついてみる。
桜「おっと・・・?今日はいつになく甘えん坊さんに大変身だね?」
『ん・・・』
思えば私はいつも不安や寂しさを感じる時は、それを紛らわすかのように、こうやって桜太にぃの背中にくっついていた。
小さい時から留守がちな両親の代わりに、甘えどころはいつも桜太にぃだった。
桜太にぃもそれを分かっているのか、振りほどいたり諭したりする事もなく、私の気が済むまでそうさせてくれる。
ふぅ・・・と小さく息を吐き、その温もりを感じていると、水を取りに来た慧太にぃが声をかけてくる。
慧「紡はいっつも桜太にばっかりくっついてんのな」
ちょっと拗ねた様子を見せながら、冷蔵庫から水を取り出しその場でグラスに注ぐ。
そんな慧太にぃを見て、1度桜太にぃから離れ、慧太にぃにも抱きついてみる。
慧「おっととと、なんだなんだ?お情けか?」
『そうじゃないけど・・・』