第14章 眠れぬ夜と揺れる思い
何だか寝付けない。
ベッドに潜り込み、どれ位の時間が経ったのだろうか。
数日続けて超早起き生活だったから、賑やかな夕食のあと、影山と日向君を見送り、夕飯の片付けを手伝って、条件反射的に早々とベッドに入った。
枕元に置いたスマホを取り、時間を見てみる。
!
まだ9時半にもなってない?!
体を起こし、布団にくるまったままで、膝を抱えて座る。
別に明日は土曜日なんだし、夜更かししたって大丈夫じゃん。
そう言い聞かせながら、これまでの事を思い返し考えふける。
日向君の落とした自転車を鍵を届けた事から始まった、今日までの生活。
毎朝の秘密の早朝練習。
中学の時には見えなかった、影山の優しさ。
日向君の人1倍、いや、その何百倍もの頑張り。
面倒見のいい先輩達。
それぞれが、それぞれの思いを抱えて時間を共有していた。
みんな一歩ずつ前に進んで、目標に向かっている。
私にギュッと抱きつきながら、もっと上手くなるって言った日向君。
いつも気がつくと隣にいる影山。
先輩後輩なんて関係なしに人懐っこく構ってくれる菅原先輩。
ちょっと強面だけど、ストレートな物言いでみんなを笑わせてくれた田中先輩。
明日は決戦の日。
考え浮かぶ事は、明日の事ばかり。
『はぁぁぁぁ・・・』
盛大なため息をひとつ吐いてみる。
温かいものでも飲んで、1回気分を入れ替えよう。
そう思って、パーカーを羽織りリビングへと足を運ばせた。
明かりが点いたリビングのドアを開けると、桜太にぃと慧太にぃは、それぞれソファーに向かい合って座り、グラスを傾けながら大人の時間をゆったりと過ごしていた。
慧「お?どした?」
慧太にぃが私を見て声をかける。
それを合図に、背中を向けていた桜太にぃも振り向き私を見ると、おいで、と手招きしてソファーを横に移動した。
招かれるまま、桜太にぃの隣にちょこんと座ってみる。
桜太にぃの隣が、小さい時から変わらない、私のいつもの座り位置。
忙しい両親が留守の時は、決まってその位置付けになり3人で固まって過ごしていた。
1番落ち着く位置。
『慧太にぃ、飲みすぎないでよね?酔っ払って部屋間違えたりするんだから!』
慧「へいへい、わっかりやしたよ」
桜「慧太は前科があるからね~」
慧「な、誘ったのは桜太だろ」