第13章 決戦前日
ふと、伏せたままになっている写真立てが目に入る。
私は引き寄せられるかのように近づき、そっと手に取った。
写真の中の2人は、今も変わらず微妙な距離感で寄り添っていた。
ハジメ先輩・・・あなたは、頑張っていますか?
私は写真を撫でながら、そっと問い掛けてみた。
少し前までは、これを見たり触れたりなんて出来なかった。
でも今は、以前よりも少しだけ、穏やかな気持ちでいる自分に驚く。
時が経つことで、思い出のひとつとして消化されているのか。
それとも、自然と忘れて行く記憶のひとつになっているのか。
どちらにしても、同じ時間を共有していた事実は変わらない。
・・・私はまた、置いていかれるの?・・・
そんな思いを胸に浮かべながら、少しの間、写真立ての中の2人を見つめていた。
桜「紡?どうかした?」
ドアをノックする音と同時に、桜太にぃが声をかけてきた。
私はハッとして、写真立てを元に戻す。
『ううん?どうもしてないよ~!どれに着替えようか、迷っちゃって。今着替えるから一緒にコート行こう?』
ドアも開けずに答えると、じゃあ待ってるよと返事が来て、階段を降りていく音がした。
どうかしてるかって言えば、どうなんだろ。
着替えをしながら、写真立ての方を見る。
終わった・・・事なのにね。
パンッ!!!っと両頬にカツを入れ、部屋を出た。
桜太にぃとコートに行くと、既に汗だくになりながら3人は練習していた。
熱血が3人・・・。
私はチラッと桜太にぃを見て、冷静な大人が1人でもいてくれて良かった・・・と胸をなでおろす。
桜「どうした?」
ほっとした様子を見て、桜太にぃが問いかける。
『ううん、なんでもない。桜太にぃが、桜太にぃで良かったなって』
桜「えぇ?なにそれ~?」
2人でカラカラと笑う。
それを見つけて、慧太にぃが声を上げた。
慧「こらぁ!なぁに2人で楽しそうにしてんだぁ?!早く練習手伝えって!」
私は、ハイハイって軽く返事をして、桜太にぃと笑いながらコートに入った。
しばらくたっぷりと練習していると、桜太にぃが時計を見る。
私も釣られて時計を見ると、3人が練習を初めてから2時間ほど経ったくらいだった。
桜「今日はこれ位で終わりにしようか?」
桜太にぃの声かけに、3人が“ まだまだ出来る! ”と声を上げる。