第13章 決戦前日
お弁当を広げるも、何となく箸が進まない。
私は箸を置き、ミルクティーに口を付けた。
何やら視線を感じて横を見ると、影山がジッと私を見ていた。
影「お前、どうした?」
『なにが?』
影「さっきから、全然、食ってねぇ」
影山はチラリと私のお弁当に目をやり、もう一度私を見た。
『食べたくない訳じゃ・・・ないんだけど・・・』
そのやり取りに菅原先輩も心配気に私を見る。
菅「体調良くないとか?保健室なら、オレ送っていくよ?」
『いえ、そんな体調悪いとか、そういうんじゃないから大丈夫です』
影山が自分の牛乳を持ち上げ、私の顔の前に突き出す。
影「弁当食わねぇなら、これ飲め牛乳」
『いらない。牛乳苦手だから。それにその牛乳って、影山がいま飲んでたやつじゃん!』
力なく笑って、それを押し戻す。
『牛乳飲まなくても、ミルクティーあるから』
そう言ってマグボトルを掲げて見せる。
菅「ミルクティーあるからって、それに牛乳入ってるんじゃ?」
『ん~、まぁそうなんですけど。桜太にぃが作ってくれるミルクティーは牛乳っぽい感じがしないから』
菅原先輩にそう答えてる間に、影山が私のお弁当の卵焼きに箸をバスっと刺して持ち上げる。
『ちょっ、急になに?!食べたかったら食べても良いけど?』
すると影山はその箸を私の口元に移動させた。
影「つべこべ言ってないで、とりあえず食え!午後は体育あるのに持たねーだろ!」
ちょっと怒り気味に言う影山に、私は降参し、分かったから押し込まないでと言いながら、そのままパクリと食べる。
桜太にぃの卵焼きは甘く、どこかほっとする味付け。
私はなかなか喉を通ろうとしないそれを、ミルクティーで押し流す。
チラと影山を見ると、まだジッと見ている。
影「それ、弁当放置するほど好きなのか?」
『放置って、たまたま食べてないだけだけど・・・ミルクティー美味しいよ?飲んでみる?』
そう言って私はマグボトルを手渡す。
影山は受け取りながらも、一瞬ためらい、やがて口をつけた。
『どう?美味しいでしょ?』
私が言うと、影山はそっぽを向きながらマグボトルを返してきた。
『ね?ね?どう?』
影「っせーな、アレだ、その。なんかいろいろ甘いンだよ!お前は早く弁当食っとけ!」
『もぅ!甘いから美味しいのに』