第13章 決戦前日
両手を広げながらジワジワと近づく田中に対して、紡ちゃんはちょっと困り顔で下がるも、遂にそれを壁が阻む。
と、とりあえず助けに行かないと!
オレは急いでシューズに履き替え走りだした。
田「はいはい行き止まりィ!では、いざ!!」
田中の言葉に身構える紡ちゃんは明らかに焦っている。
田「はい、ギュッ~!」
うわぁっ、待て田中!!!
一瞬腕の中に紡ちゃんを捕まえた田中に、思わずゲンコツ対応した。
何もゲンコツしなくても・・・と田中は言うが。
悪い、それで済んだだけ助かったと思ってくれ。
オレは自分の気持ちを隠し、敢えて大地の名前を出して脅かす。
「田中にあんな事されたら、紡ちゃんに田中菌が着いちゃうじゃんね?」
クルリと振り向き紡ちゃんにそう言うと、あははと軽く笑いながら、
『そんなことないですよ』
と、言ってオレ越しに田中を見る。
い~や、紡ちゃんが田中みたいな、ガサツで誰かれ構わずガン飛ばす様なヤツになったら困る!
「って事で。紡ちゃん?」
声を掛けながら紡ちゃんの方にちゃんと向き合う。
「はいっ、消毒!」
軽くニコニコとしながら、そう言って、オレはどさくさに紛れて紡ちゃんを抱きしめる。
『わわっ!』
急な事に紡ちゃんもビックリして声を出す。
前の時は、紡ちゃんの涙を見て思わず・・・って感じでオレも動揺したけど、あらためてこうすると・・・
紡ちゃんって、ふわふわと柔らかくて、それでいて甘い香り・・・
オレの背後で影山と日向が叫び声を上げ、田中に至っては、
田「うわぁっ!スガさん!それは反則ッスよ!!!」
な~んて叫んでいるけど、気にしない気にしない。
『す、菅原先輩、消毒って!』
紡ちゃんがそう言いながら、オレの胸をそっと押し返してくる。
オレは少しだけ腕を緩め紡ちゃんを見た。
「い~の!消毒なんだから」
笑いながらそう言って、もう一度ギュッと抱きしめる。
紡ちゃんの髪にそっと顔を寄せながら、ドキドキと大きな音を立てる胸の音に、静まれと願いながら、それが紡ちゃんに聞こえない事を祈っていた。