第13章 決戦前日
すると紡ちゃんはオレの前に周り、人差し指を口に当てて・・・
『ヒ・ミ・ツ』
って・・・
その攻撃力の強さに目を丸くした。
紡ちゃん・・・それ!反則だから!
思わずニヤけそうになる顔を隠しながら、行こっか?とまた歩きだした。
体育館前まで来ると、早くもボールの音がしている。
扉を開けると、影山が打ち込むボールを日向がレシーブするというラリーが始まっていた。
影山が打ち分けるボールに食らいつき、息が上がりながらも何度も拾う。
オレ達はそっと中に入り見守った。
少しすると田中もやって来て、それを見て驚く。
田「うわ~、キツそう~!」
田中がこぼす言葉に、紡ちゃんがうなづく。
『確かにキツそうですね。でもまだ・・・』
「ボールを、落としてはいない・・・」
続けて言ったオレに、紡ちゃんが日向を見ながら大きくうなづいた。
もう一度、日向達に目を向けた・・・その時。
『あっ!』
足が滑った?!
影「どうした?!そろそろ限界か?!もうこのくらいで、」
日「まだだ!ボール!落としてない!!」
そうだ、頑張れ!
どんな試合でも、ボールを落とさなければ負けない!
影山が不本意に飛ばしたボールを日向が全身で拾う。
ボールの行く末は・・・
田「トス?!」
「トスが上がった!!」
日向はそれを見ると、とても嬉しそうに走り出しスパイクを決めた。
「相っ変わらず、よく飛ぶなぁ日向は!」
そう言って日向を見ると・・・あれ?動かない?
まさかケガでもしたのか?!
「大丈夫か?日向?」
声をかけながら近寄ると、まだまだやれる!といいかけて吐きそうになっている。
「うわぁっっ!おいっ日向吐くなぁ!!誰か雑巾!」
あとから来た田中までが、貰いそうだと青い顔になる。
やめてくれ頼むから!体育館汚したのバレたら大地の雷が落ちるだろっっっ!
とりあえず二次災害が起きる前に田中を遠ざけ、日向には水道場に行くよう指示した。
ひと通り片付け、自分も手洗いうがいを念入りにしてから戻る。
全く・・・紡ちゃんがいる所で日向も田中も醜態晒してくれちゃって・・・って・・・
えぇぇぇ?!?!
おっ、おいおいおいおいっ!!!
な、な、何してんだ田中!!
体育館に入って紡ちゃんの居場所を確認すると、何だかよく分からないけど田中が詰め寄っている。