第13章 決戦前日
~菅原side~
アイツらとの早朝練習も、いよいよ今日で最後か・・・
影山と日向はケンカばっかするし、初めはどうなる事かと思ったけど・・・
そこに紡ちゃんがひょっこり現れて、なんかこう、上手いこと回ってるよな。
チラ、と、スマホで時間を見る。
そろそろかな?
そう思い顔をあげると、あ、来た!
離れた所から車のライトが向かってくる。
それはオレの予想通り校門の少し手前で止まると、少しして紡ちゃんと、お兄さんが降りてきた。
「おはようございます!」
いつもの様に挨拶を交わし、お兄さんが戻って行くのを見送ると、紡ちゃんと体育館に向かって歩きだした。
『今日でラストですね、秘密の朝練。私もとうとう、お役御免かぁ』
不意に紡ちゃんがそう言って笑う。
「お役御免とか、そんな寂しいこと言うなよ」
そう言って返すと紡ちゃんは務めて明るく、学校内ではいつでも会えるじゃないですか!なんてポジティブに笑う。
そういう事じゃ、ないんだよな・・・
ここ数日で、紡ちゃんといろんな話をして知った事がたくさんある。
中学の時は今のような雰囲気ではなかった事、眼鏡は実は度が入っていない事、フルーツが大好き、中でも一番イチゴが大好きな事、パンダやクマのぬいぐるみが大好きな事・・・
そして1番驚いているのは、オレが、オレ自身が、紡ちゃんと一緒にいたい・・・ということ。
こんな数日で誰かを好きになるなんて、オレって惚れっぽいんじゃ?とも思ったりしたけど。
世の中、一目惚れなんて言葉があるくらいだから、 数日あったんだから大丈夫とか、自分に言い訳してみたり。
その昔、相対性理論を唱えた人が、
【 人が恋に落ちるのは、重力の責任ではない 】
と、名言を残しているように、気持ちの重さなんて関係ないと思う。
きっと紡ちゃんを好きだと思う男子はたくさんいるんだろうな。
もしかしたら影山や日向達だって・・・
そこまで考えて、あっ!と声を出した。
『忘れ物ですか?』
オレの言葉に紡ちゃんがビックリして聞き返す。
そうじゃないよ、と答えて、オレは不思議に思っていた事を紡ちゃんに聞いてみた。
紡ちゃんが少し考え込むから、紡ちゃん?と声をかけると、オレに聞いてもらえますか?なんて小声で言うから、誰かに聞かれたら困ることなのか?と背をかがめ顔を近づけた。