第13章 決戦前日
菅「大丈夫か?日向?」
着地して動かないでいるオレを心配してか、菅原先輩が声をかけてくれる。
「はいっ!オレはまだまだやれま」
急に込み上げる吐き気。
菅「うわぁぁ!日向おいっ吐くなぁ!!誰か雑巾!」
途端に菅原先輩がバタバタして、後処理をしてくれる。
菅「とりあえず日向は顔洗って、念入りにうがいしてこい・・・」
「はい・・・スミマセン・・・」
オレは外の蛇口で用事を済ませ、大きな深呼吸してから体育館に戻った。
ふと横を見ると、影山が壁に寄りかかり、その隣には・・・城戸さん?!
えっ?!
な、泣いてる?!
「あぁぁぁぁ!!影山おまえナニ城戸さん泣かしてんだよ!」
思わず叫び、その場へ駆け寄る。
城戸さんは影山に意地悪されてないって言うケド、ホントに大丈夫か?!と肩を揺する。
すると城戸さんはオレを真っ直ぐに見て、
『あんなにレシーブ失敗ばっっっかりしてた日向君が、ちゃんとレシーブ出来てたのが何だか凄く嬉しくて』
そう言って笑う。
「えぇぇぇ?!そんな泣くほど下手だった?!」
オレの叫びに、城戸さんがクスクス笑う。
影山が横から死ぬほどヘタクソだとか、死ぬほど練習しろとか突っ込んでくる。
もっと、もっと、上手くなりたい。
いっぱい練習したい!
せめて城戸さんが泣いたりしなくなるくらい・・・
まだうっすらと涙を滲ませている城戸さんを見て、オレは何だかセツナイ気持ちになり、そのまま城戸さんを抱き寄せた。
城戸さんて、なんかいい匂いがする・・・
甘い砂糖菓子に引き寄せられるかのように、つい、首元に顔を埋めた。
『ち、ちょっと、日向君?』
「城戸さん、オレ・・・今よりもっと練習して、今よりもっとバレー上手くなるから・・・」
それは城戸さんにだけじゃなくて、オレの、オレ自身の今の思いでもあった。
「だから、もう泣いたりしないで」
もう一度、少しだけギュッと抱き寄せた。
城戸さんは戸惑いながらも、フッと小さく息を吐き、オレの背中をトントンっとそっと2回叩いた。
何だかそれは、城戸さんが頑張れって言ってくれているようで、とても温かい気持ちになれた。
城戸さん・・・オレ、絶対に小さな巨人になるから・・・
だからそれ日が来るのを待ってて。
出来れば1番近い所で・・・
そう思いながら、オレはゆっくりと息を吐いた。