第13章 決戦前日
~日向side~
早朝の体育館に、ボールの音が鳴り響く。
チキショー!
影山め!
前後左右にボールを打ち分ける影山に、オレも敵意をむきだしになる。
ぜってぇ落とさねぇ・・・
ぜってぇ負けねぇ!!!
ここで簡単にボールを落とすわけには行かないんだ!!
どんくらいの時間、続けたのかわからない。
とめどなく汗が流れて、息が上がってくる。
頭から流れてくる汗に気を取られた瞬間・・・
キュイッ・・・
ヤベッ!足が!!
ほんの一瞬バランスを崩した。
影「どうした?!そろそろ限界か?!もうこのくらいで、」
影山の言葉に、ハッと息を飲む。
「まだだ!ボール!落としてない!!」
全身から精一杯の声で叫んだ。
ボールを落としたら終わり、そう言ったのは、影山だ。
崩れた体制を立て直しきっていないところに、影山の打ったボールがオレを越えて行くのが見えた。
クッソー!!!
動け足!!!
全神経をボールに向け、オレは走り出す。
ボールの落下地点が見えた・・・
床を踏み切り、ボールに向かって飛び込む。
頼む・・・間に合ってくれ!!!!
“ ズサッッッ ”
体が床に擦れる音と一緒に、伸ばした手にはボールの感触・・・
やった!!!
ボール、落としてない!!!
その感触を味わう間もなく、影山に向かって腕を振り上げる。
ボールはオレの体とは逆に放物線を描いて飛んでいく。
オレは次に影山が打ち込んでくるボールに対応する為に即座に起き上がり、影山見た。
・・・なっ!
振り返って目の前で起きている様子に、オレは目を見開く。
影山がトスを上げる体制に入ってる?!
オレに・・・
オレにトスを上げてくれるのか?!?!
【 俺は勝ちに必要なヤツには、誰にだってトスを上げる 】
【 今のお前は、勝ちに必要だとは思わない 】
頭ん中に、影山の言葉が回る。
やっと・・・オレにもトスが上がるんだ!
オレはさっきとは違う気持ちと勢いで、影山が上げたトスに向かって走りだした。
キュキュッと音を立て、思い切り飛ぶ。
“ バッシィィィィィッ ”
重く響く音と、目の前の光景。
影山が初めてオレに上げたトスを打つ感触・・・
手のひらがまだ、ビリビリする。
オレはぜってぇ忘れない!!
絶対に・・・