第13章 決戦前日
~影山side~
菅原さんに鍵を開けてもらって日向と準備を始めた。
俺達だけを先に中に入れると、菅原さんは野暮用があるから門まで戻って来ると言って踵を返して歩いていった。
野暮用って、なんだ?
ま、いいか。
とりあえず少し、サーブでも打って待っていよう。
ボールを掴むと、あからさまに俺の目の前でソワソワする日向がいる。
なんなんだ?
「おい、便所なら早く行ってこい」
日「ち、ちげーよ!なぁ影山、菅原先輩戻ってくるまで、オレにボール打ってくれ!」
いつもなら速攻断るが、まぁ、城戸ん家での特訓で、レシーブもマシにはなって来てるし、ちょっとだけ打ってやるか。
「ボールを落としたら、即、終了だからな」
日「おぅ!」
適当に間を開けて、俺達は向き合うと俺は日向にボールを打ち込んだ。
ボールを落としたら終わり・・・そう言った手前、俺が先に落とす訳にはいかず、日向がヘタクソレシーブで返してくるボールの軌道に少し合わせてやったりした。
ここ最近の特訓のせいか、日向はヘタクソながらにも、レシーブで返し、まだボールは落ちていない。
始めてから随分と時間も経っている気がする。
何度も何度も打ち込むボールに、日向は食らいつく。
段々と息が上がっているのが分かる。
一瞬の油断か、日向か体のバランスを崩した。
「どうした?!そろそろ限界か?!もうこのくらいで」
日「まだだ!ボール!落としてない!!」
なっ、コイツ・・・
ほんの一瞬、集中力が途切れたせいか日向に向けたボールを打つ手が滑り、そのせいで予想以上に遠くに飛んでしまう。
焦って日向を見ると、まだ体制が直りきっていない。
チッ・・・これで終わり・・・か・・・
そう思った瞬間。
日向が勢いよく走り込み、ヘッタクソなフライングレシーブでボールを俺へと返した。
コイツ・・・この気迫と勝ちへの拘りはどこに秘めているんだ・・・
これだけのボールに対しての執着心なら、あるいは・・・
俺の方へと返ってくるボールに、体が無意識にトスへのモーションをしていた。
田「トス?!」
菅「トスが上がった!!」
特別なこの一球を、高く高く上げる。
日向はそれを見て、素早く駆け込んで飛ぶ。
初めて見た、あの日のように・・・
【 俺は勝ちに必要なヤツには、誰にだってトスを上げる 】