第13章 決戦前日
日「だから、もう泣いたりしないで」
日向君は、引き寄せた手に力を入れて言う。
私は、頑張って、という思いも込めて、背中に腕を回し2回ポンポンっとすると、日向君はゆっくりと息を吐いた。
影「日向テメェ!いい加減に城戸から離れろ!!」
田「くぅぅ!!なんて羨ましい!!日向く~ん?オレと代わり給え!」
影山が日向君の襟首を掴んで引っ張り、その代わりに田中先輩が、なぜか私に両手を広げ近づいてくる。
私は田中先輩の勢いに押されながら、少しずつ後ろに下がると、壁にたどり着き逃げ場を失ってしまう。
田「はいはい行き止まりィ!では、いざ!!」
ズンズンと田中先輩が目前までやってきて、逃げ場のない私は一瞬、捕獲されてしまった。
田「はい、ギュッ~!・・・いってぇ?!」
菅「はい、ギュッ~!っじゃないよ田中!女の子になんて事してんだよ!!」
突然のことにビックリして前を見ると、菅原先輩が田中先輩を私から引き剥がし、間に入る。
田「スガさ~ん・・・何もゲンコツまでしなくても・・・」
菅「オレだったから、それだけで済んだんだ!これが大地だったら・・・どうなるかな~?」
菅原先輩がニヤリと黒いを見せると、田中先輩は急に大人しくなり後ずさる。
私から田中先輩が離れたことを確認し、菅原先輩はクルリと私を振り返る。
菅「田中にあんな事されたら、紡ちゃんに田中菌が着いちゃうじゃんね?」
田「ぬぁっ?!スガさん!オレの事バイ菌扱い?!」
2人の会話に思わず笑う。
『そんなことないですよ』
ね?と言うように、菅原先輩越しに田中先輩を見ると、田中先輩がおぅよ!と大きくうなづく。
菅「って事で。紡ちゃん?」
名前を呼ばれ、菅原先輩に視線を戻す。
菅「はいっ、消毒!」
『わわっ!』
次の瞬間、今度は菅原先輩が私を腕に閉じ込める。
影・日「「あーっ!!!」」
田「うわぁっ!スガさん!それは反則ッスよ!!!」
菅原先輩の体の向こう側から、3人の叫び声が聞こえて来る。
『す、菅原先輩、消毒って!』
腕から逃れようと、菅原先輩の胸を押し返そうとした。
菅「い~の!消毒なんだから」
そう言って菅原先輩はもう1度腕の中に閉じ込めた。
私は3人の叫びよりも近い所で、早鐘の様に鳴っている菅原先輩の鼓動を少しの間、聞いていた。