第40章 指先が奏でるもの
あの2人、どうも何か引っ掛かる。
一夜漬けじゃどうにもならないかも知れないけど、明日の対戦相手を少し研究してくのはアリだと思うから。
全ては明日のために。
岩「とにかく夜更かしなんかして寝坊だの遅刻だのしやがったら・・・分かってるだろうな・・・?」
あからさまにオレに向けて拳を握る岩ちゃんに後退りしながら、大きくウンウン!と首を縦に振る。
「とにかくさ、明日は頑張ろうね岩ちゃん?」
岩「とりあえずそのムカつくポーズやめろ」
チッと舌打ちしながら言って岩ちゃんは、寄るところがあるからと早々にオレと別れた。
「オレには夜更かしすんなって言いながら寄り道するとか。ってか、寄るところってどこだよ」
既に聞こえる範囲を超えて小さくなっていく岩ちゃんの後ろ姿を見送りながら、まぁいっか?と肩を竦めてオレも歩き出した。
家に着くと早々に夕飯とシャワーを済ませ部屋に引き篭った。
今日の烏野と伊達工の試合を収めたDVDを流し、ヘッドフォンを頼りに目を据える。
ポイントは、ここだ。
飛雄がトスを上げ、おチビちゃんや他のメンバーがスパイクを打つ・・・その瞬間。
似たような場面を繰り返し再生しては、何度も、何度も頭に叩き込んでいく。
やがてひとつの事に気がつくと、それはほぼ確信へと繋がって行った。
「なるほどね・・・まだ直接見て確認しないとだけど、これはもしかしたら・・・アリ、かもね」
些か緩む口元をそのままにヘッドフォンを外し、やや疲れた目を擦りながらDVDの電源を落とした。
「まさかとは思ってたけど、オレの考えが正解だとしたなら・・・誰の入れ知恵かな?ま、恐らくあの彼辺りだろうけど」
脳裏に浮かぶ爽やか笑顔くんをかき消すように、そろそろ寝ないとホントに岩ちゃんに殴られそうだと小さく笑って布団の中へと潜り込んだ。