第40章 指先が奏でるもの
~ 及川 side ~
「お先に失礼します!」
オレと岩ちゃんを残して後輩達が帰って行き、それを見送りながら自分も帰り支度をしつつ鞄の中に目を落とす。
今日の烏野の試合を収めたディスク。
これを見て、オレは確認したいことがいくつかあるんだ。
全ては明日、オレ達が勝つために。
岩「おい、くれぐれも夜更かしなんかすんじゃねぇぞ」
・・・ギクリ。
「岩ちゃんは、オレのお母ちゃんですか?」
チリっと睨みを効かせる岩ちゃんに軽口で返せば・・・岩ちゃんはいつもの倍、いや、三倍増しで眉間に皺を刻む。
「ご、ゴメンゴメンゴメン!しない!夜更かしなんかしないって!コンディションは万全で行くって!」
岩「くだらねぇこと言ってんじゃねぇクソ及川!部室閉めんだからチンたらすんなグズ川」
「悪口を略さないで!」
岩「グズ及川」
「言い直さなくていいよ!」
岩「うるせぇ早くしろ!」
「分かった!分かったから!」
指先で部室の鍵をクルクルと回しながらも仁王立ちでオレを見る岩ちゃんに若干ビビりながらカバンにいろいろ詰め込んで肩に掛ける。
「お待たせ~!じゃ、帰ろ岩ちゃん」
そう言って足早に部室から出て鍵を閉めた岩ちゃんと肩を並べて歩き出す。
岩「おい・・・お前、何を考えてる」
少しの間オレと岩ちゃんは黙って歩いてたけど、不意に岩ちゃんが足を止めオレの顔を見る。
「何って、別に?」
岩「嘘だ。お前、さっきカバンにDVD入れてただろ今日の伊達工と、烏野の」
・・・ギクリ。
さすが岩ちゃん・・・野生のゴリラ。
「ヤダなぁ岩ちゃん!対戦相手の事を事前に調査するくらいキャプテンの勤めじゃないか」
岩「何を今更それっぽい事を言ってんだクソ川。だいたい烏野は練習試合だってやっただろうが」
「だってオレその練習試合ほとんど出てないモーン」
岩「最後にチョロっと出ただろ」
「チョロっとだけじゃん?だから、ちょーっと烏野の予習しとこうかな?って。それにほら、その練習試合にはいなかったメンバーもいたし、ね」
あの時は確かにリベロもエースらしきメンバーはいなかった。
いや、正確にはいたはずだ。
以前の烏野の試合で見た覚えはある・・・対戦してなかっただけで。
それに今日の烏野には、少し気になる事もあった。
飛雄と、それからあのおチビちゃん。