第40章 指先が奏でるもの
~ 影山 side ~
揺蕩う湯船の湯を軽く手で救って、離す。
あれから城戸んちで飯食って、それから近いから大丈夫だと言っても、俺は未成年だからと言って慧太さんに家まで送り届けられた。
その帰り道の間、慧太さんと話をしながらも頭の片隅には城戸の事があって。
『大会が終わったら話すって、なんの話?今じゃダメなの?』
別に、今じゃダメだとか、大会が終わってからの方がとか、そういうのは別にない・・・ケド。
それを伝えるという選択は、ホントに正しいのかと疑問符が浮かぶ。
そもそもアイツがバレーから離れた理由は、岩泉さんとの決別があってからで。
オレはこれから先もできる限りバレーは続けていくし、もし・・・もし、城戸とそういう関係になれたとして、だ。
いつかオレもバレーにだけ集中しなければならなくなった時、岩泉さんと同じ選択を迫られてしまったら。
そう思うと、アイツは同じ理由でまた傷付いてしまうんじゃないかと思えて・・・いや、オレは岩泉さんとは違う。
・・・と、思う。
城戸と知り合ったのは中学入ったからで、最初は同じ学年にやたら小さいヤツがいて、それで女バレのコートにいて、なんかこう・・・子犬がボールを追いかけて走り回るみたいな・・・?
子犬、というワードに城戸をポチと呼ぶ月島が浮かび、最近はそれに対してそう呼ばれるのが当たり前のようにニコニコしながら月島と話す城戸も浮かび眉を顰める。
クソっ・・・なんでアイツは月島とそう楽しそうにしてんだよ!
それだけじゃねぇ。
日向とも、山口ともそうだ。
他の2年や3年は先輩だからいいとしても・・・いや待て。
田中さんはあの3対3の時から城戸をお嬢と呼んでやたら構う。
西谷さんもわりと最初から城戸を名前呼び。
まぁ、この2人に関しては別に警戒する事はないだろう。
が。
澤村さんだっていつの間にお互いに名前呼びしてて、更に菅原さんに至っては及川さんに負けず劣らずベタベタだ。
寧ろこっちの2人は、要注意人物だ。
・・・じゃねぇ。
いま考えることは明日の事だ。
浴槽の縁に背中を預けながら天井を仰ぎ、ズルズルとその体を湯に沈ませる。
明日は青城との試合。
それはある意味、俺と及川さんとの真っ向勝負でもあり。
それに、それだけじゃねぇ。