第40章 指先が奏でるもの
「するかそんなもん!なんでもねぇよ!」
『なんで急に怒るのよ!城戸が、とか聞こえたから私の話かと思っただけなのにエッチな話とか影山サイテー・・・』
「だからそんな話してねぇっつってんだよチビ!ブス!」
売り言葉に買い言葉でついそう言った直後、しまった、ここは城戸んちだったと気付く・・・も、遅し、慧太さんに頭を鷲掴みされ硬直する。
慧「おやおや影山く~ん?誰の妹がチビでブスなんだ?あ、チビはホントの事か」
「いえ・・・誰でもありません・・・スンマセン・・・っていうか、痛いッス慧太さん・・・」
慧「紡はチビだけど、もうひとつの方は多分オレの聞き間違いだよな?・・・ん?」
笑いながら言ってるけど、慧太さんの目が笑ってなくて怖ぇ・・・ラスボスじゃない慧太さんがこれ程ならば、その慧太さんにラスボス認定されてる桜太さんは超ヤバイだろ。
マジでヤバい・・・慧太さんを直視出来ねぇ・・・
正面切って慧太さんを見れずに目を泳がせていると、頭を鷲掴みされてる俺を見て城戸が笑う。
桜「コラ慧太!影山くんは貧血治まったばっかなんだからちょっかいかけるのやめろよ。ほら手を離せって」
俺んちに電話を掛け終わった桜太さんが、俺たちの様子を見て間に割って入る。
助かった!のか?!
慧「いやぁ、ちょーっと楽しいことが分かったからよ?遊んでやってたんだ」
桜「・・・楽しい事って?」
マズイ・・・桜太さんが話に食いつきそうだ!!
慧「あ?桜太も知りたい?」
桜「勿体ぶってないで早く話せばいいのに」
慧「だからアレだアレ。青い春ってやつ」
含み笑いを見せながら言う慧太さんに、桜太さんが首を傾げて意味が分からないなと呟く。
「あの!お、桜太さん!!晩飯・・・なんですかね・・・ハハッ・・・」
早くこの話題から抜け出したくて出た言葉は自分でも笑っちまうくらい子供じみた言葉で。
桜「夕飯?肉じゃがだけど・・・」
「めっちゃそれ食いてぇッス!なんかスゲー腹減って来て!」
叫ぶように言えば慧太さんはゲラゲラと笑い、それとは違い桜太さんはじゃあ夕飯にしようかと微笑む。
俺、今日・・・厄日か?
そんな事を考えながら、倒れたりしたら危ないからと城戸に付き添われ、手や顔を洗うために洗面所へと歩き出した。