第40章 指先が奏でるもの
『ダメだよそんなの。1人で帰っててまた貧血みたくなったら危ないじゃん?』
慧「そーそー、紡の言う通り。ウチまでスグそこだし、折角だからラスボス桜太に診て貰っとけ?明日も大事な試合があるんだろ?ん?」
慧太さんに肩口をガッツリ掴まれそう言われてしまうと逆らえない空気にもなり・・・
「はい・・・そう、します・・・」
項垂れ気味に言って、楽しげに話し出す城戸兄妹の会話を聞きながら城戸の家までを歩いた。
桜「顔色は大丈夫そうだね・・・ちょっとごめんね?・・・うん、目元も大丈夫だ。影山くんのお母さんには俺が電話しておくから、ここでもう少し休んでいくといいよ。あ、お腹は空いてない?」
「まぁ・・・腹は、それなりに・・・」
桜「じゃあ、夕飯も一緒に食べよう。それも影山くんのお母さんには伝えておくから」
「いや、でもホントにもう大丈夫なんで」
と言った俺の声は桜太さんに届く事はなく、早くも電話を掛けていた。
慧「つーかよ、影山。オレはお前のこと結構気に入ってるから言っとくけどな?我が家のラスボスはあの桜太だぞ」
「ラスボス・・・って?」
繋「だから、ラスボスはラスボスだっての。よくある話で、お嬢さんを下さい的なことを言う一般家庭のラスボスは親父さんだったりするだろ?そのラスボスが城戸家じゃ桜太なんだって話」
「はぁっ?!な、なにをイキナリ言ってるんですか?!別に俺はそんな、城戸を貰うとか思ってな・・・え?なんでそう言う話になるんですか?!」
思わず声がデカくなる俺に慧太さんがシーッと指を立てる。
慧「さっきのアレ、ホントのトコどーなんだ?たまたまオレはお前らのちょっと後ろを歩いてたんだけどな?貧血であんな風にならねぇだろ・・・と、なると?感極まっちまったって感じじゃねぇの?」
どうなのよ?とニヤリとしながら慧太さんは言って、俺の顔をマジマジと見る。
「だから、それはその・・・そうじゃなくて、城戸がひとりで帰る、とか言って」
『私がなに?なんの話?』
「うわぁっ?!」
慧太さんに言うべきか言わざるべきか考えてボソボソと話している俺の前にグラスに入れた麦茶を差し出しながら城戸が現れる。
『ねぇ、なんの話をしてたの?』
「なんでもねぇ・・・」
『だってなんか慧太にぃがニマニマしてるし・・・あ、もしかしてエッチな話とかしてた?!』