第40章 指先が奏でるもの
『だから大丈夫だって。ほら見て?あそこの防犯灯ちゃんと取り替えてあるでしょ?だから暗くないしさ?』
影「それでも送る。じゃねぇと、」
『じゃないと、なに?』
平気だって言ってるのに、と影山を仰ぎ見れば。
影「だから、時間・・・とか・・・」
モゴモゴと歯切れが悪く話す影山がいて。
『時間?あぁ、それなら全然平気だよ?もう少ししたら慧太にぃが帰ってくるし、家にひとりだけって事にはならないから』
影「そうじゃねぇよ、俺が言いたいのはだな・・・あぁ、クソっ・・・」
何かを言いたいのに上手く言葉が纏められないのか、影山は苦い顔をして横を向いてしまう。
『ほら、やっぱり疲れてるんじゃん?とにかく私は大丈夫だから、影山も早く帰りなよ?・・・じゃ、また明日ね?』
バイバイ?と軽く手を振って背中を向け歩き出せば影山も諦めて帰るだろうと思って、振り返りもせずに歩き出す。
うん、着いてくる足音はしてないから、影山もあのまま帰ったかな?
数メートル歩いてから様子を伺うように振り返れば、影山はまだ曲がり角に立っていて。
『早く帰りなよー?明日も大変なんだか、ら・・・え・・・なんで?』
いつまでもその場を動こうとしない影山にまた明日ともう一度言おうと声を掛ければ、影山はズンズンと大きな歩幅で私のいる方へと向かってくる。
ヤバい・・・あの感じ、もしかして何か怒ってる?!
っていうか、私が怒らせた?!
送るって言うのを断っただけだよ?!
そりゃまぁ、いつもは送ってくれてありがたいと思ってるけど今日は大会だったし伊達工と熱戦だったじゃん?!
グルグルと思考を巡らせていると、影山はもうすぐ近くまで来ていて。
『か、影山ゴメン!なんかよく分からないけどゴメ、ブッ・・・』
あ、あれ・・・なんで・・・?
影山、怒ってるんじゃない、の?
っていうより、なんで私いま・・・影山に抱き・・・えぇっ?!
あまりに突然の出来事に思考回路がショートして、藻掻くことも出来ないままに呆気に取られてしまう。
『あ、あの?・・・影山さーん?おーい・・・?』
まるで回覧板を届けに来た人のように思わず影山をさん付けで呼んでも届くことなく、代わりに胸に押し当てられた私の顔に影山の鼓動が響く。
影山、どうしたんだろう・・・