第40章 指先が奏でるもの
あ、けど。
大会が終わったらって事は試合に勝っても勝てなくても話すって事なのかな?
『ねぇ影山?その話って、』
影「うるせぇチビ!黙れ」
えぇ・・・新しいバージョン来たよ・・・
うるせぇとチビのコラボとか、影山はどれだけ私をチビチビ言えばいいの!
まぁ・・・影山に比べたら小さいってのは確かだけどさ。
『すぐそうやってチビとか言うし、影山サイテー』
ふーんだ!と拗ねながら言って、私は確かに小柄だけど、影山が背が高いから余計に小さく見えるだけだし!と小さなお返しをする。
影「城戸が何を言おうと、大会が終わるまでは言わねぇ」
『じゃあ大会が終わるまで待つよ。勝っても勝てなくても話してくれるなら、待つしかないもんね』
そんな風に切り返せば、影山は足を止めて私を見た。
影「勝っても勝てなくてもじゃねぇ・・・勝ったら話す」
『じゃあ、そうじゃなかったら私はずっと一生、影山からの話は聞けないってこと?』
影「それは・・・知らねぇ。勝っても話さないかも知れねぇし、その時になってみなきゃ分からねぇ」
それじゃ大会終わったらの意味ないじゃん、と言えば、影山は大きく息を吐いてから空を見上げ、そしてその視線は私へと向けられた。
影「俺にもいろいろあんだよ・・・心の準備とか、なんかそういうやつが」
『心の準備?影山にもそんな人間っぽい所あったんだ?』
影「黙れチビ・・・お前、俺を何だと思ってやがる」
『えっと・・・王様?』
影「テメェ・・・捻り潰す」
にゅいっと伸びてくる影山の手を避けながら、そんな簡単に捻り潰される訳には行きませーん!と駆け出す。
影「こンの、待てチビ!」
『待ちませーん!』
カラカラと笑いながら全力ダッシュで逃げても、いつもの曲がり角に着く頃には影山に追い付いてしまう。
『あーもぅ逃げ切れると思ったのに!』
影「ナメてんじゃねぇし」
『ナメてる訳じゃないけど、さすがにあれだけの試合だったし逃げ切れるかと思っただけだもん』
はぁ、と大きく深呼吸してカバンを背負い直し、おでこに滲み出す汗をハンドタオルでグイッと押し拭いた。
『今日はここでバイバイでいいよ?家までスグだし、影山もさっき言ったように試合で疲れてるから早く帰ってご飯食べて、明日に備えてゆっくり休んで貰いたいし』
影「いや、家まで送る」