第13章 決戦前日
『確かに日向君はかなりキツそうです。でもまだ・・・』
菅「ボールを落としては、いない・・・」
菅原先輩の言葉に、私は菅原先輩と顔を合わせうなづいた。
その時、日向君がレシーブの後、少し足を滑らせてバランスを崩した。
『あっ!』
思わず声を上げてしまい咄嗟に口を押さえる。
影「どうした?!そろそろ限界か?!もうこのくらいで」
それでも影山はボールを打ち込む。
日「まだだ!ボール!落としてない!!!」
日向君のいる位置より少し手前に落ちそうになるボールを、日向君は下手ながらも飛びついて何とか返す。
影「チッ!・・・・・・?!、ヤベッ・・・」
返されたボールを、影山がまた打ち込む。
そのボールは影山の意を反して、まだ起き上がりきっていない日向君の遥か後方へと飛んでいく。
田「うわっ、性格ワリィ!」
ボールは大きな軌道を描いて、床に向かって落ちて行く。
今度こそダメか・・・そうみんなが思った時、日向君がまたそれに飛びつき、下手ながらもフライングレシーブで後ろにボールを返す。
私達3人は声にならない言葉を漏らしながら、ボールの行く末を見ていた。
まだ日向君は起き上がりきっていない。
いまここで影山に打ち込まれたら・・・今度こそ・・・
私がそう思って影山を見た、瞬間。
え・・・?
ゆっくりと、本当にゆっくりと、影山がトスを上げるモーションに入っていた。
***パシュッ***
影山が・・・トスを上げた・・・
田「トスっ?!」
菅「トスを上げたっ!」
3人同時に日向君を見た。
田「でも日向にスパイク打つ気力なんて・・・」
田中先輩がそう言った時、私達の目の前を凄い速さで日向君が駆け抜ける。
そしてそのまま、まるで大きな翼で羽ばたいたかの様に高く飛び上がり、晴れやかな顔でスパイクを打った。
菅「相っ変わらず、よく飛ぶなぁ日向は!」
菅原先輩が笑う。
日向君、凄い高く飛んだ・・・
こんなに高く飛ぶ人、初めて見た。
菅「日向にとっては、特別な事なんだろうな。セッターから、トスが上がるって事は・・・」
菅原先輩が小さく呟く。
私は、日向君から聞いていた、影山の言葉を思い出していた。
【 俺は勝ちに必要なヤツには、誰にだってトスを上げる 】
【 今のお前は、勝ちに必要だとは思わない 】