第13章 決戦前日
菅「紡ちゃん?」
急に話すのをやめて考え込む私を、菅原先輩がちょっと屈んで覗いてくる。
ま、いっか。
『菅原先輩、聞いて貰えますか?』
私が言うと、菅原先輩は興味津々に耳を大にする。
『それはですね・・・』
そう言いながら、菅原先輩の正面に回り込み、真っ直ぐ見上げる。
菅「それは・・・なに?」
『ヒ・ミ・ツ・・・』
人差し指を唇に当て、ゆっくり言葉を放って見せる。
菅原先輩は一瞬、目を見開き、息を飲んだ。
菅「なぁんだよ~?教えてくれたっていいべ~」
『ヒミツはヒミツで~す』
お互いにそう言いながら、体育館までの道を一緒に歩いた。
2人で体育館前まで来ると、中からボールを弾く音が聞こえて来る。
早くもやってんなぁ!と言いながら菅原先輩がドアを開けながらも、その手が止まった。
どうしたんだろ?
そう思い、私も菅原先輩の隣に並ぶ。
中を覗くと、そこに影山と日向君が向かい合って軽くラリーを続けていた。
嬉しい・・・日向君ちゃんとレシーブで影山に返せてる。
高さや角度はまばらながらも、影山が打ち込むボールを、日向君は食らいつきレシーブする。
私達が来たことにも気が付かないほど集中している影山達に気遣い、菅原先輩が私の背中に手を当てながらそっと中へ入り、そして静かにドア閉めた。
どれくらいラリーが続いているのか、影山は涼しい顔をしていても、日向君は息が上がり始めている。
頑張れ!!
いつの間にか、菅原先輩も私も力が入り前のめりになって、目の前の光景を見ていた。
それから少し経って、遅れてスンマセン・・・と言いながら田中先輩が来た。
そして私達と同じように影山達のラリーに目を奪われている。
田「全然ボールを落とさねぇ・・・あの2人、いつから続いてんッスか?」
瞬きも忘れたかの様な目で、田中先輩が言う。
そんな田中先輩の言葉に、菅原先輩はチラリと体育館の時計を見る。
菅「少なくても、オレ達が来てから、15分は経ってるよ・・・」
田「?!・・・そんなに?!」
田中先輩が驚くのも分かる。
私だって、こんなに2人のラリーが続いたのを見たことがない。
肩で息をし始める日向君に対し、影山は容赦なくボールを打ち込み、更にはボールを前後左右に打ち分ける。
田「うわ~、キツそう~!」
私も同じように思う。