第40章 指先が奏でるもの
ひと通り抱えた荷物を押さえながら、オレはまた観覧席へと静かに視線を流す。
飛雄と紡ちゃん、仲良し過ぎない?
いくら同じ中学出身で、家が近くて、同じ高校にいるからってズルい!
紡ちゃんを誰より先に見つけたのは、このオレだって言うのにさ。
それなのに岩ちゃんが攫っちゃうし。
攫ったと思ったら勝手にバイバイしちゃってて。
オレにもチャンス到来かと思えば飛雄に烏野主将にエトセトラ。
なんだか敵多し。
でも、敵が多ければ多いほど燃えるよね。
「絶対、手に入れる」
ギュッと手を握りしめ、待っててよ紡ちゃん?と胸の奥で呟きながら、影山の後を小走りで追い掛ける小さな姿に目を細めた。
学校へ戻る為に用意されているバスが来るのを待ちながら、次の対戦相手は烏野か・・・とみんなと話していれば、金田一が急にソワソワし始めるのを見た岩ちゃんが、便所なら早く行ってこいと呆れながら言えば。
金「便所じゃねえっすよ岩泉さん・・・あれ、烏野っすよね?」
そう言って金田一は建物の中から歩いて来る黒い集団を指差した。
岩「だな。間違いなくあのジャージは烏野だ」
「ここで会ったのも何かの縁ってコトで、ちょっと行ってくるね~」
岩「はぁっ?!おい!」
岩ちゃんの怒号なんて聞こえないフリで、足早に黒い集団の元へと進む。
「お疲れ様、かな?」
軽くそう声を掛ければ、途端に烏野のメンツは顔を強ばらせオレを見る。
澤「・・・明日は、宜しくお願いします」
「そんな硬っ苦しい挨拶はどうでもいいからさ?別に取って食おうとは思ってないんだし、普通にしててよ。同じバレーボールをする者同士って感じで」
って言いながらも、実際にオレは烏野バレー部のメンツなんてどうでもいいんだよね。
ここに顔出した目的は、ひとつ。
『もう!繋心すぐ煙草吸いに消えるんだから!探すの大変なんだから禁煙してよ!』
繋「悪りぃって言ってんだろチビ助。それにオレが煙草くらいいいだろっての、大人なんだしよ」
『だから、時と場合を考えてよね、全く』
・・・紡ちゃんだ。
『だいたい繋心いつもそうじゃん!学校の時も校外に出てはいつも戻ったら煙草臭いし』
繋「分かったっつーの!・・・おいチビ助、あれ・・・」
『今度はなに?・・・・・・及川、先輩・・・』
やっと、紡ちゃんがオレに気付いた。