第40章 指先が奏でるもの
~ 及川 side ~
さて・・・このままオレのサーブでどこまで点が取れるかな?
立て続けて取れた点をもう1点、なんて考えれば。
アッチャー・・・拾われちゃったか!
けどそれもただ・・・拾われただけ。
「チャンスボール!」
ネットの向こう側でレシーブされたボールは大きく弧を描いてこっちに戻ってウチのリベロがしっかりと捉える。
そしてオレがトスを上げる相手は・・・ちら、と視線を回せば、岩ちゃんが先読みしてスパイクに入る準備をしてる。
そうだね岩ちゃん、ここは岩ちゃんが決めてよ?
それを悟られないように僅かに指先でボールをコントロールしてトスを送れば、言わちゃんは当然のようにスパイクを決めた。
「岩ちゃんナイスキー!さっすがオレのパートナー!」
岩「誰がパートナーだ!今のはどう考えても俺にだっただろうが!くだらねぇのは顔だけにしろやクソ川!」
くっ・・・大会中でも衰えない岩ちゃんのオレへの悪言!
「さぁ、試合終了まであと少し!みんな、信じてるからね!」
キラリと光る笑顔でコートにいるみんなの顔を見て、最後に・・・観覧席を見れば。
「こらこら、そこの中学・・・いや、小学生?とにかくそこの3人、試合中なんだからもう少し静かにね」
大会を中継しているテレビ局のスタッフが、観覧席を見上げて注意をしているのが見える。
あの烏野のチビちゃん、小学生に間違われたのか?
隣りには烏野のリベロも・・・確かにあの2人は小柄だけど、さすがに小学生は・・・あぁ、なるほどね。
紡ちゃんもいたからちっちゃい子3人組で括られたって訳か。
あのションボリ顔を見ればきっとそうなんだろうと喉の奥で笑い、コート内の自分の立ち位置へと動く。
「さぁ、このまま流れを維持して勝ちに行くよ」
いつもと同じようにとびきりスマイルで言えば。
岩「いちいち面倒くせぇツラでこっち見るんじゃねぇ!」
「酷くない?!オレのキュンキュンスマイルを面倒臭いとか!」
岩「試合に集中出来ねぇなら・・・」
そう言いながら岩ちゃんが握り拳を構えてオレに見せる。
「わかった!ちゃんと集中するから今そのゲンコツ振りかざすのやめて!」
岩「お前が何考えてるか知らねぇが、余計なこと考えてんじゃねぇ」
言いながら岩ちゃんは観客席にチラリと視線を投げながら鼻息荒く自分の立ち位置に戻る。