第40章 指先が奏でるもの
『あ、うん・・・ゴメン』
清「じゃあ、先に行ってるね。もし用があるって言われたら話して来ていいから。その時は私が澤村に言っとく」
それじゃ、と清水先輩は荷物を持って歩き出す。
影「用がって、なんの話だ?」
『あぁ、うん・・・ちょっと及川先輩がコッチを見てて、それで・・・』
影「及川さんが?」
まぁ、ね・・・とまた青城のベンチに視線を戻せば、今もなお、及川先輩は私たちの方を見ていて。
影「・・・城戸、気にするな」
そう小さく言った影山は、及川先輩の方を見たまま、急に私の肩を自分の方へと引き寄せた。
『えっ・・・か、影山?!』
その行動に驚きながら影山を見上げれば、影山はまだ青城のベンチを見つめたまま私を引き寄せた腕に力を込める。
『な、なに急に?びっくりするよ、こんなの』
及川先輩だって、岩泉先輩だって見てるのに!と思いながら自分も青城を見れば、及川先輩は一瞬だけ驚いた顔を見せてから、その後はふんわりと笑みを浮かべて・・・背中を向けた。
影「・・・行くぞ。俺たちは学校に戻ってからミーティングだ。武田先生が車を正面に回すからって言ってたしな」
『そう、だったよね。行こう、影山』
荷物もありがとうと受け取り、記録ノートをリュックに押し込んで肩に掛けた。
観覧席の出入口に続く階段を登りながら何気なく振り返れば。
その視線の先には、またこちらを見ている及川先輩がいた。