第40章 指先が奏でるもの
菅「そうそう!小さくても紡ちゃんは可愛いからいいんだよ、な?旭もそう思うだろ?」
旭「え?!いや、オレに振られても困るっていうか、その、」
『なんで困るんですか東峰先輩が!今いちばん困ってるの私ですよ!もう!』
全く失礼しちゃう!とブツブツ零しながら元の席へ戻り、影山に押し付けたままのノートを返して貰ってまた記録を取り続けた。
それから間もなくして青城は安定して点を取り続け、次の烏野の対戦相手は・・・青城に決まった。
明日は遂に公式大会試合で、烏野と青城の試合が始まる。
どこまで烏野がリード出来るか。
どれだけ失点を押さえてゲームメイクが出来るか。
それは、神のみぞ知る・・・と言ったところだろうけど。
出来るなら、青城にも勝ちたい。
伊達工に勝ったように、みんなで青城に勝ちたい。
最終的な得点を書き込んでノートを閉じると、清水先輩が私の肩をツン、と突く。
清「城戸さん・・・多分だけど、城戸さんを見てるんじゃないかしら、彼」
彼・・・とは?という顔をしながらも、清水先輩がほら?と小さく指し示す方に視線を向ければ。
『及川、先輩・・・?』
清「違ったらごめんって思ったけど、さっきからずっとあなたを見ている気がして」
『いえ・・・多分、見てます・・・』
及川先輩だけではなく、岩泉先輩までも。
その目を逸らすことが出来なくて、逸らせないまま清水先輩に言葉を返した。
清「そう、やっぱりあなたを見てたのね。何か話したいことでもあるのかしら?こっちは大丈夫だから、コート出たら行ってみる?」
『・・・いえ、大丈夫です。用事があるなら、きっと向こうからアクション起こすと思うので』
でも、もし本当に向こうから声を掛けられたとしたら、私はどんな顔をすればいいのか分からない。
あの雨の時、国見ちゃんが間に割って入ってくれた時から・・・及川先輩が、怖い。
その時を思い出し、ギュッと自分の体に腕を回す。
あの目に、また捕まってしまったら・・・私は、どうしたらいいんだろう。
・・・怖い。
影「・・・い、・・・てんのか?・・・おい!」
『あ・・・影山・・・ゴメン、なに?っていうか、痛い・・・』
パンっと肩を叩かれ、その衝撃でハッとして振り返れば、私の荷物を持った影山が不機嫌な顔で立っていた。
影「ボケっとしてんじゃねぇ」