第13章 決戦前日
桜「紡、忘れ物は大丈夫?」
『うん、ちゃんと確認した。じゃ、行ってきます』
軽く言葉を交わし、車を降りる。
菅「おはようございます!」
『菅原先輩、おはようございます!』
桜「おはよう、菅原君」
私達が言葉を交わす後ろで、ほんのりと朝日が顔を出し始めている。
今日で朝練も最後かぁ・・・。
私が最初に秘密の朝練に顔を出してから今日まで、菅原先輩は私が来るのを校門の所で待っていてくれる。
体育館までちゃんと行けますよ?と言った事もあったけど、
菅「まだ薄暗いし、女の子を1人で歩かせるのは男としてちょっとね?」
なんて笑って、それから今日まで毎回。
私は見送っている桜太にぃに軽く手を振り、菅原先輩と歩きだした。
『今日でラストですね、秘密の朝練。私もとうとう、お役御免ですかぁ』
菅「うん、今日が最後の特別特訓だね・・・でもさ、お役御免とか、そんな寂しいこと言うなよ・・・」
特に深い意味はなかったけど、そう言った私に、菅原先輩は顔を曇らせて答えた。
『もう、やだなぁ菅原先輩!朝練は最後になっても、学校内ではいつでも会えますよ?』
私がそう言うと、菅原先輩は、そういう事じゃないんだけど、と返す。
『日向君の、この特別な朝練がなかったら、私は菅原先輩とこんな風に歩いたり、お話出来たりとか、もしかしたらなかったかもですよ?それが今。こうやって一緒にいるんだから、日向君が繋いでくれた縁なのかも知れませんね?』
菅「あはは、紡ちゃんはポジティブだなぁ」
菅原先輩はそう笑いながら、あ!と思い出したかのように立ち止まる。
『忘れ物ですか?』
私も隣で立ち止まり、菅原先輩を見上げた。
菅「いや、忘れ物じゃないよ。そう言えばさ、昨日も思ってたんだけど、少しずつなんだけど日向がレシーブ上手くなってると思うんだ」
私は菅原先輩に言われて、特訓の成果が出てるんだなぁと嬉しくなり、ウンウン!と大きくうなづいた。
菅「それでさ、どんな練習してるのか聞いても2人とも極秘ですとか言って教えてくれないし、それに練習場所も。最近放課後に校庭にいないっぽいし、どこでどんな練習してたの?」
『あぁ、それはですね・・・』
言いかけて、ふと思う。
別にこれと言って隠す必要もないかなと思ったけど、影山と日向君が菅原先輩に極秘だって言ってるなら・・・