第38章 切られた火蓋
~ 澤村side ~
中学最後の試合で負けて、悔しくて、情けなくて・・・あの時ボールに手が届いていたらとか、そんな事を考えて。
けど、試合が終わってしまってからじゃ結果が覆ることもないのも分かっていて。
みんなが帰り支度をしているのにも構わずに、止まらない悔し涙を流し続けた。
その後は普通に引退して、進路相談が近くなった時だったよな。
池尻とどこの高校に行くのか、バレーは続けるのか話したのは。
池「澤村は高校どこ?」
「烏野」
池「烏野?」
「ほら、春高出たとこ。池尻は?」
池「オレ?オレは常波・・・別々だな」
「だな」
池「そしたら、もしオレも高校でバレー続けるとしたら、高校で戦う事もあるかもな?ま、そん時は・・・ケチョンケチョンにしてやるからな?」
「・・・やってみろよ」
そう言って笑いあって、でも結局はオレが烏野に入った頃は地区予選でさえ勝ち進む事もなくて。
常波・・・池尻と会場で顔を合わせることもなくて。
なのに、これが最後かも知れないって大会で再会するとか。
あぁ・・・いや、これが最後じゃない。
オレ達は、この試合も、次の試合もずっとずっと勝って、もっと大きな場所へ行くんだ。
・・・このチームで。
常波のスパイクがオレ達の間を抜けて・・・
「西谷!」
すんでのところで西谷が間に合わず・・・烏野コートに落ち、点を取られる。
西「クソがぁぁぁ!・・・次はぜってぇ、拾う!」
いろいろあって抜けてた西谷も。
旭「ドンマイ、西谷」
西「なんか・・・旭さんだけにはドンマイ言われたくないです」
旭「えぇ・・・」
最後の1歩を躊躇っていた旭も・・・ちゃんと戻って来た。
「1本!取り返すぞ!!」
「ッス!!」
ー ピッ! ー
得点板を見れば、あと1点で2セット目が終わる。
あと1点・・・その1点を、全力で取る!
このチームで。
このメンバーで。
・・・カラーコートへ行くんだ!!
常波からのサーブを西谷がレシーブして、影山へと繋ぐ。
影山はそのボールを・・・俺に向けて、繋ぐ。
目の前でブロックに飛んだのが池尻だと知りながらも、最後まで力を抜くことなく・・・スパイクを打った。
ー ピッ! ・・・ ピーッ!! ー