第38章 切られた火蓋
国「紡・・・なにお前おかしな動きしてんだよ、ロボットか?」
突然ぎこちない動きになる私を見て、国見ちゃんが鼻で笑う。
『ち、違う。だって影山がめちゃくちゃ怖い顔してこっち見てるから目を合わせたらヤバいと思って』
国「影山?・・・あー、ホントだ。視線だけで人殺せそうな感じってヤツ?」
『でしょ?!さっきはあんなに優しかったのに、急にどうしたんだろうって』
気付かれないようにそっと影山の方を見れば、反対側のコートに移動していく姿が見えて少しホッとしてしまう自分がいる。
国「優しいって・・・影山が?」
『そうだよ?』
国「ふ~ん・・・俺より?」
『・・・・・・は?』
国「・・・なんでもねぇ」
急に不機嫌さを見せる国見ちゃんに、変な国見ちゃん・・・と肩を竦めて、またコートへと視線を落とす。
影山は・・・優しい時もあるんだけどなぁ?
・・・怒らせると怖いけど。
頭をガシッと鷲掴みされたりもするけど。
でも、なんか・・・誰かにいて欲しいって思う時、気が付けば影山が側にいたりして。
思い返せば、澤村先輩と菅原先輩が初めて家に来て話し合いをした時も、バレーを辞めてしまった理由を話しながら言葉に詰まった私の手に自分の手を重ねて・・・って、あ、あれ?
あの時どうして影山は・・・
だけど、その時はそれがなんだか温かくて、落ち着く感じがして。
それに、前に部活の帰りに及川先輩たちに会った時も、緊張して固まった私を背中に隠してくれたり。
なんで、だろう。
ここぞって時ほど、いつも影山が一緒にいる気がする。
もちろんそれは、家が近所で帰り道が同じだからってのもあるかも知れないけど。
影山がいると、安心してる自分がいる気がする。
澤村先輩や菅原先輩も、同じはずなのに。
何かが同じで。
何かが、違う。
そう考えながら影山を見ていると、視線に気付いたのかコートの中に入った影山も私を見上げる。
そんな影山に、頑張って!と小さく手を振れば、影山は一瞬目を見開いて横を向いてから、また私を見・・・
ひいぃぃぃぃ・・・!!
な、なんで?!
なんでまためちゃくちゃ睨み聞かせてるのっ?!
ぜ、前言撤回!!
やっぱり影山は・・・優しくなーい!!