第38章 切られた火蓋
順調に試合が進んで、ようやくコートチェンジとなる。
ハラハラする所もあったけど、それは烏野がどうだとか、そういうのじゃなくて。
どこのチームも、大会となれば同じだから。
前半ラストの記録を書き終わり、コート脇にいるみんなが給水するのを見て私も今のうちに飲み物をと思っていたのに。
・・・あれ?
ちゃんと持ち歩いていたはずのマグボトルが見当たらない。
どこかに置き忘・・・
『あーっ!下に置きっぱなしだった!』
思わず叫べば、その声に反応した烏野メンバーが一斉に顔を上げてこっちを見る。
更によく見れば、私がいま探していたマグボトルまでも、みんなの所にあって。
『さっき急いでたから持ってくるの忘れちゃったのか・・・』
喉乾いたのになぁ・・・とため息を吐けば、目の前にスッと差し出される大きめなマグボトルを見て驚きながら振り返る。
『・・・国見ちゃん?!』
国「やるよ。あんだけギャーギャー騒いでたら喉乾いてんたろ?」
『えっ、でも!そしたら国見ちゃんのがなくなっちゃうから』
グイグイと差し出されるマグボトルをやんわり押し返して見れば、国見ちゃんも同じようにまた押し返す。
国「俺はスクイズで余分に持ってるから平気。それに、最悪足りなくなったら紡を・・・恨む」
いや、そんな事で恨まれても困るんだけど。
国「いいから飲んどけよ。モタモタしてっと2セット目始まんぞ?」
『それはヤバい・・・記録しなきゃなのに』
だったら早く飲んどけよとご丁寧に蓋まで開けてくれる国見ちゃんからそれを受け取り、何口か飲んで蓋を締めた。
『ありがとう国見ちゃん。後で洗って中身入れ替えて返すね』
国「別に洗わなくてもいいよ、そのまんま俺飲むし」
・・・はぃ?
『ちょっ、そのまんま飲むとか!』
国「今更だろ?前はお互いにこんなのしょっちゅうだったし、お前も平気だろ?」
『それは、そうかもだけど・・・』
中学の時は国見ちゃんが言うようにお互いに部活中にそういうこともあったし、それを言うなら金田一君だって同じだし?
高校じゃ、影山だって同じ事してるし。
そんな事を考えながら、何気なく階下にいる影山をチラリと見れば・・・
『うわ・・・』
とてつもなく恐ろしい顔でこっち見てるし!
め、目が合わないようにしとこう・・・うん、それがいい。
怖いから!