第38章 切られた火蓋
でも、わざわざ3人でいたのを教えてやるほど、俺も優しくないってやつで。
そんなやり取りをしてる間にも、烏野は追加点を入れては、また盛り上がる。
岩「スゲーな、あの烏野の3番。パワー型スパイカーか・・・それにあのリベロも、相当出来るヤツだな」
それまで座って試合を見てた岩泉さんが俺達の方へと動き、及川さんと俺の間に入って試合の続きを見る。
及「ちょっと岩ちゃん!なんで無理やり割り込んでくるのさ・・・そんなにオレの事・・・好き?」
岩「おい・・・言いたい事はそれだけか?」
及「い、岩ちゃん?!ゲンコツ握りしめるのやめて!」
岩「てめぇは余計なこと考えてる場合じゃねぇだろうが!もし烏野が勝ち上がって来たら俺達と必ず当たるんだ・・・しっかり見とけや!」
ヘラヘラとした笑顔を向ける及川さんに岩泉さんが一喝して、とりあえずは及川さんもおとなしくなる。
ざまぁ・・・なんてこっそり思っていれば、岩泉さんはコートを1度見てから今度は俺の顔を見る。
岩「国見、お前もしっかり集中しとけ。今ここに、どこの誰がいたとしても、余計なことは考えるな」
「あ、はい」
どこの誰がいてもって、そんなの岩泉さんこそじゃねぇの?
どう視野を広くしたって、ここには青城の面子以外には・・・紡しかいねぇし。
だからと言って、それを言うつもりもないけど。
そういや紡と別れた理由ってのは、確か大きな大会に集中したいから・・・とか、だったっけ?
なら、この大会が終わったらどうなるんだ?
元鞘に・・・なんて事は、ないよな?
事実、紡からはしばらくそう言うのは考えられないからって聞いたし。
実際、人の心なんて本人にしかわかんねぇけど・・・もしその選択肢の中に、自分も入れたら、とか。
・・・ねぇな、多分。
あいつの中で、俺は元同中のクラスメイトで。
相談相手とか、愚痴聞き係とか、なんかそんな困った時の・・・的な?
あー、クソッ・・・自分でそんな立ち位置を考えててなんか虚しいわ!
でも本当は・・・どうなんだろうな・・・
諦め悪く視界の端に見慣れたちっこい姿を映しながら、盛大なため息を零した。