第38章 切られた火蓋
日「城戸さんが最初に喝入れてくれたら、スゲー頑張れると思う」
影「お前はそもそもガムシャラに頑張れ・・・ヘタクソなんだから」
日「なんだと影山!」
『こら影山!喧嘩しない!』
旭「でも、日向が言いたいことはオレも分かるよ。あの時、城戸さんが一生懸命にしてくれたから、オレも戻って来れたし」
西「旭さんもガムシャラでお願いしますよ?・・・1ヶ月もサボってたんだから」
田「ノヤっさんはまた旭さんの傷口に塩コショウを・・・」
大「旭はエンジンかかるまで時間かかるからなぁ・・・ひげチョコだから」
旭「・・・すんません」
東峰先輩が小さくなるのを見て、みんなで笑う。
『・・・分かりました。私なんかに凄い大役な気もしますけど、真ん中で頑張ります』
月「いつもみたいにキャンキャン吠えれば大丈夫なんじゃない?・・・ポチなんだし」
『キャンキャンなんて吠えてません!』
月「ほら、もう吠えてるじゃん」
山「つ、ツッキー?!」
表情ひとつ変えずに言う月島君をチロリと見て、これがいまのみんなの・・・通常運転なんだよね、と息を吐く。
『よし・・・準備はオッケーですか?』
円陣の中心で片膝をついて、みんなが頷くのを確認する。
『大地さん・・・じゃあ、いきますね』
最後にそう確認して、胸いっぱいに大きく大きく空気を取り込む。
『烏野ー!ファイッ!』
「「 オーーーーーーーッ!!! 」」
鼓膜が弾けるんじゃないかという位の掛け声を受けて、思わず耳を押さえながら立ち上がる。
繋「おい紡!そろそろ上がっとけ!」
『了解です!繋心・・・烏養コーチも、ファイト!』
繋「当たりめぇだっつーの!ほら、早くしねぇと間に合わなくなるぞ!」
ニヒルな笑いを見せる繋心と、どこか緊張気味な武田先生にも通りすがらハイタッチをして観覧席へと抜ける通路へ駆け出して行く。
いよいよこれから・・・始まるんだ。
ひとつでも多く、勝ち抜けて欲しい。
そう思いながら・・・またもじわりと滲む視界を拭っては、通路を駆け抜けた。