第38章 切られた火蓋

縁「えっ、あっ･･･オレ？！」

そんな私を目の当たりにした縁下先輩が慌て出すのを見て、私も慌ててゴシゴシと拭う。

『ちょっと油断したら、出ちゃいました』

スンと鼻を啜って前を向き直し、ずっと黙って私を見ている影山と向き合う。

『影山･･･』

影「痛ってぇな･･･何すんだよ」

ポスンと影山に軽くパンチをして、そのまま影山のユニフォームをキュッと掴む。

『私の気持ちを背負うって言って、負けたりしたら･･･怒るからね？』

影「･･･あぁ」

『もし簡単に負けたりしたら、目玉焼きハンバーグは当分来ないから』

影「それは困る･･･またアレ食いてぇし。つうか、負けねぇし。青城と当たるまでは、絶対」

『ばーか。青城と当たっても、でしょ』

影「･･･当然だ」

当然だと言って僅かに口端を上げる影山に、油断禁物！とまたパンチをしてみんなの方に体を向ける。

『私はそこからみんなを応援してますから、絶対勝ちましょう！清水先輩、あとはよろしくお願いします』

この場へ残る清水先輩にも声をかけて、私は移動するためにコートを出ようと歩き出せば、グイッと腕を引かれて振り返る。

菅「紡ちゃん、まだもうちょい待って･･･大地、まだ時間平気だろ？」

澤「ギリっちゃギリだけど、なんかあるのかスガ？」

菅「あるのか？じゃないだろ大地！せっかくなんだしさ、紡ちゃんがいる内にみんなでアレやろうぜ？」

アレって、なんだろ？

ほらほら！と菅原先輩がみんなをかき集め、それは自動的に円を作っていく。

菅「じゃ、紡ちゃんも入って･･･あ、違う違う！紡ちゃんはそこじゃなくて･･･」

みんなが輪になっているところに入り込もうとすると、菅原先輩が私の両肩を掴みながら円の真ん中へと押し入れる。

『あの、真ん中って普通は大地さんとかが入るんじゃないんですか？』

そうですよね？！と見上げれば、菅原先輩も澤村先輩も、顔を見合わせてから私を見る。

菅「さっき影山も言ってただろ？男とか女とか関係ないって」

澤「そういう事。だからさ、第１試合目だし･･･ここは元気いっぱいにやっちゃってくれるとありがたいんだけど？」

『そうじゃなくて！そんな大事なところなら、それこそ大地さんじゃないとダメなんじゃ？！』

グルリとみんなの顔を見ながら言っても、それは変わらず。