第38章 切られた火蓋
菅「その山口が、いつも自分を励ましてくれた紡ちゃんに、なにか出来ることはないだろうか?って相談にね」
澤「清水のアレを見て思いついたんだろう。そしたら影山が、な?」
澤村先輩に釣られて影山を見て、そう言えば昨日の帰りに影山が私に、清水先輩と2人で学校の門の前で待ってろ・・・とか言ってたのは、これの事?
影「お前・・・山口にいつも、自分は女だから公式戦になったらコートに入れないとか話してただろ。それに、西谷さんも東峰さんも・・・お前がなんかいろいろやってなかったら、どっちもここにはいなかったかも知れない。日向や俺だって3対3で勝てなきゃ同じことだ」
『でもそれは、結果的にはそれぞれが頑張ったからであって、私は別になにも・・・』
影「違う。お前はいつだって、みんなと一緒にここにいるって事だ。男だからコートに入れる、女だからムリだとか、そんなんじゃなくて・・・クソッ・・・上手く言えなくて面倒になって来た」
えっ、いま面倒とか言わなかった?!
せっかくちょっと、感動しかけてたのに!
月「肝心なところで面倒になるとか・・・やっぱ自己中の王様は健在ですか?」
山「ツッキー、そ、それ言っちゃダメなやつ!」
あからさまに怪しく笑う月島君に、影山がジロリと視線を投げて、大きくため息を吐いた。
影「試合が始まったら、今日はずっとお前の気持ちも全部まとめて俺が背負っててやる」
キッパリと言い切る影山に、言葉が出ない。
いつもは到底、そんな事をいう感じじゃなくて。
意地悪で、ホントに意地悪で・・・・・・意地悪しかないような影山なのに・・・なんか、ズルい・・・
菅「っていうか影山!そこは俺がじゃなくて、オレたちが!だろ?」
影「・・・」
菅「黙るなよ・・・」
澤「スガ、そこは今こだわる必要はないだろ?でも、紡・・・みんなの気持ちは、そういう事だよ」
『・・・はい』
どうしよう・・・なんか、凄い・・・嬉しい。
少しずつ込み上げてくる嬉しさに比例して、視界も少しずつ滲んでいく。
縁「ビックリさせちゃったかな?」
ぽんぽんっと私の肩をそっと叩く縁下先輩の顔を見上げて、小さく笑う。
『はい、少しだけ・・・でも、それ以上に凄く・・・凄く・・・嬉しい、です』
嬉しいと声に出すと、それまで堪えていた物がグッと溢れ出してしまい頬を伝う。