第38章 切られた火蓋
影「だからってワケじゃねぇけど・・・その、アレだ・・・西谷さん!東峰さん!」
話しながら影山が大きく声をかければ、西谷先輩も東峰先輩も顔を合わせて頷いて、こっちを見る。
影「このボールは、俺たち全員からお前へのメッセージだ・・・西谷さんから戻って来たら、ちゃんといいヤツ上げろよ」
『え、ちょっ、なに?!』
言葉の意味が上手く理解出来ずに慌てると、影山はほんの少しだけ口角を上げて、手に持っていたボールを西谷先輩へと向けて軽めのサーブで繋ぐ。
西「ナイス影山!・・・紡!」
『えっ?!は、はい!』
綺麗な弧を描いて、ボールが私のいる場所へと戻って来る。
澤「旭!オープン!」
近くでずっと様子を見ていた澤村先輩が声を張れば、その道筋を開くように周りのメンバーが東峰先輩へと場所を開く。
影「東峰さんのは、ネットから少し離れた高めのトスだ」
ネットから離れた・・・高めの・・・
ゆっくりと落ちてくるボールに両手の照準を合わせ、指先にボールを感じると同時に・・・高く、高くトスを上げる。
そのボールが指先から離れると、今度は東峰先輩へと吸い寄せられるように真っ直ぐ向かっていく。
直後、大きく、力強く床を踏み切る音がして。
そのボールは東峰先輩によって弾けるように向こう側のコート際へとスパイクされた。
西「旭さん!ギリギリアウトじゃないっスか!」
旭「ご、こめん!・・・なんか緊張して・・・」
西「なんでですか!」
澤「やっぱり旭は・・・ヒゲちょこガラスハートだな」
旭「えぇ、いまそれ言うとか・・・」
えっ、と・・・?
菅「びっくりした?」
『あ、はい・・・あの・・・』
ポンっと肩に手を置かれ、今のはどういう事なのかを聞こうとすれば、菅原先輩はびっくりしたなら大成功だと笑うだけだった。
旭「ナイストスだったよ、城戸さん」
『あ、りがとうございま、す?』
西「旭さんのスパイクはギリギリアウトでしたけどね」
旭「・・・すみません」
私達のいる場所に西谷先輩と東峰先輩が近寄ると同時に、それまで周りで見ていたメンバーも集まりだした。
澤「昨日の帰り、山口が相談に来たんだよ」
山口君が?と思いながらその本人の顔を見れば、山口君は気まずそうに視線を泳がせる。
試合に出して欲しい、とか・・・直談判でもしに行ったとか?