第38章 切られた火蓋
~ 及川side ~
紡ちゃんの武勇伝を聞いたあと、オレ達はゾロゾロと青城に割り当てられた応援席へと移動した。
もう少ししたら1回戦目が始まるのか・・・
ま、青城はシードだから、それまではどこがどんな試合をするのか見物するかなぁ。
なんて思った瞬間、烏野がコートに入って準備を始めているのが見えた。
「やっほ~!飛雄ちゃんにチビちゃん、元気に変人コンビやってる~?」
観覧席から声を掛ければ、見知った2人がこっちを振り返った。
日「だ、大王様・・・!」
影「チッ・・・行くぞ日向」
飛雄は相変わらず、オレに素っ気ない態度だこと。
っていうか、なんでチビちゃんはいつもオレを大王様って呼ぶんだ?
「あれ、リベロがいる。練習試合の時にはいなかったのに」
真っ黒なユニフォームの中に、1人鮮やかなカラーのユニフォームを来たメンバーに気付く。
岩「なんかデカイ奴も増えてんな?」
岩ちゃんに言われて視線を辿れば、確かに練習試合の時にはいなかったメンバーがいる。
それからよく見てみれば・・・まだ他にも・・・
入「ん?・・・おや?」
横「新しい指導者、ですかね・・・?」
監督も横溝君もそれに気付いて、アップ中の烏野を凝視する。
繋「時間に制限あるんだから、どんどん打てよ!・・・日向!オドオドすんなっ!」
確か顧問はあの眼鏡の先生だったから、もしかして、もしかしなくても・・・コーチ、かな?
繋「おい紡!お前も手が空いてるなら遊んでねぇでボール出しどんどんやってやれ!時間ねぇぞ!」
『遊んでなんかないってば!ボール拾いしてたの!ほんっとハゲつる繋心って失礼ね!』
繋「誰がハゲつるだ!早くコート入って来い!」
・・・ん?
「紡ちゃんを、呼び捨て?」
岩「それになんか、コーチを呼び捨てしてたか?」
どんな関係なの、あのコーチと紡ちゃんて!
入「新しい選手に指導者か。どんな風に変わったかな?・・・烏野は」
横「そうですね・・・念の為データは取っておきます」
入「あぁ、そうだな」
練習試合でリベロやデカい選手、それからコーチがいなかったのに、青城は負けた。
いつ、メンバーが増えたのかなんて分からないけど・・・
「油断してると、危ないよね」
岩「なんだ?勝てないとでも言うのか?」
「オレは負けるつもりは微塵もないけど?」