第38章 切られた火蓋
池尻がちゃんと分かってるんだって知って、その池尻の言葉に大きく頷いて返した。
「烏野も常波も、最初から負けるつもりでいる訳じゃない。だから、俺達も・・・全力出すからな」
池「望むところだ!・・・とかカッコイイこと言ってたら、オレも澤村みたいにカワイイ彼女の1人位出来てたのかね~」
「俺みたいにって?」
そもそも俺、そんなのいないけど。
池「さっきの小さい子の事だよ」
「小さいって・・・あぁ、紡のことか?」
バレー部の中にいたら、紡どころか清水だって・・・通常の普通の女子だって小柄に見えるだろうけど。
現にそれなりに身長ある道宮だって、男バレの体育館来れば小さいぞ?
池「そうそう、その小さい子。澤村の彼女じゃないのか?澤村の事を名前呼びしてたし、澤村だってさっき名前で呼んでたし。中学の時に言ってた澤村の好みのタイプにドンピシャって感じじゃん?小柄で守ってあげたくなるような可愛い子って」
「わーっ!池尻ストップ!・・・つうか、そんな前の事よく覚えてるよな・・・」
慌てて周りを見回しながらシーッと指を立てれば、池尻はその俺を見て笑った。
池「忘れるわけないだろ?だって堅物そうな澤村が、当時のメンバーとの恋バナ的なやつで話振られて答えたんだから。あん時はみんな、衝撃食らった感じだったぞ?」
衝撃って、俺が好みのタイプ話すのはそんなに変なのか?
池「で、どうなんだよ澤村。彼女だって聞かされても、黙っててやるから」
「あー・・・いや、紡はそんなんじゃないって。烏野の女子マネージャーを頼んで、やってくれてるだけだから」
池「ホントにそれだけ?」
「それだけ・・・だ」
池「なに今の怪しげな間は」
「うるさい。ったく、イキナリ何を言い出すのかと思えば、紡が彼女だとか・・・」
そりゃ・・・そうなったら・・・とか、思った事がない!とは言い切れない事もないこともないけど・・・って!
なんで俺はそんなに動揺してんだよ。
それに紡は、今はそんな事に構ってられないっていうか。
だって紡は・・・
池「急に黙り込んでどうしたんだ?あ・・・もしかして澤村、さっきの子が好・・・」
「だから違うって!」
またも慌てて言葉を切れば、池尻は楽しそうに笑い出した。
池「澤村がそこまで慌てるとか、初めて見たよ」
「笑うな!俺だっていろいろあるんだ」