第38章 切られた火蓋
及「マジで?!それでどうなったの?」
「あ、はい。イキナリ指差すとか失礼だ!とか、ヘラッとしながら謝るな!とか」
「それから、うちのエースがどれだけ凄いか知らないくせに失礼過ぎるだろ!とか、絶対勝ち進むだとか・・・見てるオレ達がハラハラしたっていうか」
それだけ聞いても、なんかそう言い放つ紡が想像出来ちまうな。
「それから伊達工のヤツが烏野の女子マネに名前とか聞いてたよな?」
「聞いてた!けど、先に名乗りもしないヤツに教える名前はない!とかなんとか?」
武士かよ!・・・とかツッコミ入れてる場合じゃねぇけど・・・
及「つ、紡ちゃんって前世は武士?!」
似たようなツッコミをする及川に、コイツと同じ事を考えた俺は・・・なんてため息を吐き出す。
「けど、最終的には烏野の主将になんか言われて、うちと練習試合したときのセッターに担がれて暴れてたっけな」
及「飛雄に?なんで?」
「なんか、試合前なんだから騒ぐなって主将が」
澤村がそう言うのも、まぁ・・・分かる。
相手が伊達工ってだけに、締めるとこ締めとけって感じなんだろ。
烏野は前回、伊達工との試合で敗れて・・・終わってるし。
「見た目あんなにちっちゃくて可愛らしい感じなのに、あんなスゲー啖呵切るとか・・・案外、気が強い女子ってトコっすかね」
及「そうだねぇ・・・紡ちゃんは過去に、この岩ちゃんを言い負かした事があるくらいだし?」
「・・・うっせぇなクソ川、黙れや」
あん時は、アレだ。
及川が俺に・・・って、言い合いになったのはコイツが原因じゃねぇか!!
その時の事を思い出し、思わず黙って及川にゲンコツをお見舞する。
及「痛っ!!えっ?!なに?!なんで?!」
「うるせぇ、ただの気まぐれだ」
及「気まぐれでゲンコツしないでよ!」
「ギャーギャーうるせんだよ!とっとと歩け!」
騒ぐ及川にもう1発ゲンコツを食らわせて、ほかの奴らにも目だけで従わせる。
ったく・・・これから試合なんだぞ、俺達は。
紡が言うように烏野が伊達工と当たって勝ち進めば、言わずと青城と当たる事になる。
だが、勝って前に進むのは・・・俺達だ。
相手が烏野だろうと油断はしない。
そうだ・・・烏野だろうと、な。