第38章 切られた火蓋
~ 岩泉side ~
及「岩ちゃん、さっきのマジで痛かったからね?!ボールぶつけるとか」
「うるせぇな!嫌だったら女子にキャーキャー言われてないでサッサと歩けや!」
チームで移動してるってのに、なんで主将のお守りをしなきゃならねぇんだよ。
いつの間にかはぐれていた及川を連れてチームの元へと戻れば、ドリンク作りに場を離れていた下級生達がザワザワしながら戻って来る。
「つーか、さっきのマジで凄かったよな!」
「だよな!伊達工のあんなデッカイやつに食ってかかるとか・・・あれって確か、烏野・・・だったっけ?」
「そうそう烏野!前に見かけた時はあんな感じじゃなかったと思うけど、確かに凄かったよな!あの小さい女子マネージャー!」
烏野の・・・小さい女子マネ?
及「ね、岩ちゃん。それってもしかしてだけど」
「もしかしなくても、紡だな。アイツ伊達工相手に何やったんだ?」
伊達工のデカイやつって言えば、多分・・・あの鉄壁ブロックかます2人のどっちかだろうけど。
及「ねぇ、その女子マネちゃんが伊達工になにしたの?」
「おい!」
興味津々に下級生の会話に混ざり出す及川の襟を掴めば、及川は無駄にキラつかせた笑顔を俺に向ける。
及「だって気になるじゃん?岩ちゃんは気にならない?」
「どうでも」
そうは言いながらも、アイツは一体何やらかしたんだ?って思っていたのは事実で。
「オレ達がドリンク作り終わって戻ろうとしたら、ちょうどそこに烏野の集団が通ったんすよ。な?」
「あぁ。そしたら伊達工のデカイ奴が、烏野のメンバーをイキナリこうズバッと指差して」
その時のことを分かりやすくする為か、そいつらがお互いに向き合って見たままの状況を作り出す。
「それで、伊達工のセッターの人が止めに入って、ついでにもう1人のチャラい感じのヤツにもどうにかしろって言ってて」
なるほど。
最初に指差したとかいうのが、あの無愛想なデカイ奴で。
伊達工の主将が声を掛けたのが・・・及川に負けず劣らずな、の方か。
「なんか一触即発っぽい空気を、そのチャラい感じのヤツが軽そうに謝って立ち去ろうしたら・・・」
「烏野の小さい女子マネが待ったをかけたんです。ちょっと待ちなさい!・・・だっけか?」
紡・・・お前ホント、相手をよく見てから動けっつうの。
なにやってんだよ・・・