第38章 切られた火蓋
旭「あ、いや・・・そうじゃなくてさ・・・イキナリで緊張し過ぎて、動けなかった・・・」
アハハ・・・と苦笑を浮かべる東峰先輩に、西谷先輩が全く旭さんは!と零す。
『東峰先輩もあれくらいでビビるのやめましょうよ!こんなに大きな体してるのに、なんでですか?!大地さんが言うようにガラスハートだからですか?!』
旭「えぇっ?!だ、だってビックリしたのは本当だし・・・」
『だからってビビり過ぎですよ!ね?!』
同意を求めようとみんなを見れば、そのみんなは大地さんの顔を見たあとにスっと目を逸らす。
澤「影山」
影「・・・ゥス。おい城戸、行くぞ」
『あっ、ちょっと影山?!なにしてんの?!』
ヒョイっと影山の手で小脇に抱えられ、両手足をバタつかせながら抵抗するも、とっくに宙に浮いてる状態では何も出来ず。
『離してってば!自分で歩くから!ねぇ!』
影「うっせぇなチビ!暴れると落とすぞ!」
菅「影山、落としたりしたらケガするだろって・・・」
『ほら!スガさんもそう言ってるじゃん!だから降ろしてよ!』
どれだけ言っても涼しい顔したまま歩き続ける影山にジタバタしながら更に抗議する。
月「小さい犬ほどよく吠えるってヤツ?いい加減うるさいよ、ポチ」
『ちょっと!』
月「あー、うるさ・・・」
菅「月島も煽るなよ。紡ちゃんもさ、さっきのって旭の事を思ってくれた事なんだろ?」
ひょこっと私の顔を覗く菅原先輩が、そうだろ?と言うように笑顔を見せる。
『私は別に・・・ただあの人がヘラヘラしながらすみませんって言ったのが癪に触って・・・』
菅「いいのいいの、そういう事で。影山もそろそろ解放してやれって。でも紡ちゃん凄いよなぁ・・・あんな啖呵みたいのやっちゃうとか、さすが田中にお嬢って呼ばれるだけあるわ。よくやった!褒めて遣わす!」
楽しそうに笑いながら菅原先輩が私の頭にぽんっと手を乗せる。
『・・・スガさんは、いつから殿様になったんですか?っていうか、烏野には王様もいるし殿様もいるし・・・あ、殿様じゃなかった!セクハラ大王だった』
菅「紡ちゃん・・・今それ言う?」
お返しですよっと笑い返して捲れかけたジャージを直す。
伊達工に勝たなきゃ、青城までは届かない。
だから、勝って欲しい。
そんな事を思いながら、伊達工が消えた通路を振り返った。