第38章 切られた火蓋
前が見えない代わりに、隣に立つ澤村先輩の顔を見れば、それはそれで険しげな顔をしていた。
西「伊達工業だ」
西谷先輩の声が聞こえて、その聞き覚えのある名前にそう言えば繋心が話してた中に同じ学校名があったな・・・と思い出す。
『大地さん、伊達工業って・・・』
そう確認しようと顔を見れば、重苦しい空気が流れ出すのを感じて口を閉ざす。
西「なんだテメェ・・・」
なに・・・この感じ。
何となくみんなの影を掻き分けて前を覗き見れば・・・なんか・・・なんか凄い大きい人がいる?!
普段から大きい人に囲まれる生活には慣れてるつもりだけど、それでも向かい側に立つその人は、私が知る人達よりもはるかに大きな人で。
そんな人が、どうしてか正面に立つ東峰先輩を真っ直ぐに指差しで見続けていた。
なにが、起きてるんだろう。
それも含めて東峰先輩の横まで移動して顔を見れば、東峰先輩は東峰先輩で、その人から目を逸らすことなく・・・真っ直ぐに見据えていた。
「ちょ、ちょいちょい・・・な、何やってるんだよ・・・すみません・・・ほんとにすみません」
澤「あ、いえ・・・」
「おい二口、手伝え!」
二「はーい」
上級生らしき人が駆け寄り、東峰先輩を指差したままの人を押さえるように回り込んだと思えば、その人は近くの・・・それもなんだか大きな人に声を掛けた。
っていうか・・・にも言わずに人を指差したままって、どうなの?!
二「すみませんコイツ、エースと分かるとロックオンするクセがあって」
指差している人の腕を下げるように押さえている割には、なんだかヘラッと笑う感じが、すみませんと言いながらも、そうでもない感じで。
私にはちょっと、イラッとさせる要素があって。
二「だから、今回も・・・覚悟しといてくださいね?」
大きな人の背中を押しながら歩き出し、振り返りざまにニコッと笑顔を見せながら言うその人は・・・ホントに・・・こう・・・あぁもう!!!
「お前ら失礼過ぎだろ・・・なんでいつもそういう事するんだよ・・・頼むからやめろ、ホントに・・・」
そそくさっと立ち去ろうとする背中をめがけて、東峰先輩にされたのと同じように指差して大きく叫ぶ。
『ちょっと待って下さい!特にそこの・・・なんかヘラッとした人!』
二「・・・は?ヘラッとしてるって、オレ?」