第37章 その先にある未来
そりゃ、私は影山から見たら好きだったバレーを辞めるとか有り得ないヤツだと思われてるかもしれないけど!
それには、ちゃんとした理由だって・・・あるんだから・・・
影「おい、城戸。お前ちゃんと前見ろ、あ・・・」
「わっ・・・なに?!」
考え事をしながら歩いていたせいで、掛けられた影山の声に反応するのが遅くなり・・・顔面に衝撃を受ける。
『いった・・・たたたた・・・メガネごと鼻打った・・・』
っていうか今、結構な衝撃だったんだけど?!
ガツンと来た痛みに涙目になりながら顔を押さえて、自分が衝突した相手はなんだったのか確認するために顔を上げて行けば。
そこに見えて来たものは、突然の衝突に驚いて振り返る・・・見慣れた、顔で。
『だ、大地さん?!すみません私、ちょっと考え事してて!ケガはありませんか?!』
澤「びっくりはした・・・けど、俺は平気。そっちは大丈夫?」
『はい、あ、いえ・・・』
澤「え、どっち?!」
『あ、その・・・メガネごと思いっきり鼻打っちゃいました・・・けど、大丈夫です、多分。自業自得ですから』
メガネの隙間から指で浮かぶ涙を拭いながら言えば、不意に落ちてくる影にまた顔を上げる。
澤「道宮、ちょっとこれ持ってて」
『え?あっ・・・』
動く澤村先輩の背後から、チラリと見える道宮先輩が見える。
けどそれも、近付く大きな体に隠れてしまう。
澤「ちょっと見せて・・・あぁ、赤くなってるな・・・」
避けるヒマもなくスッとメガネを外されて、衝撃を受けた場所をマジマジとチェックされる。
『あの、大地・・・さん?』
澤「なに?」
『か、顔・・・が、ちょっと、近い・・・です・・・』
澤「え?・・・・・・・・・ご、こごごごめん!!そんなつもりはなくて!その!あー・・・えっと、とにかくごめん!」
至近距離で視線が絡んだまま、大袈裟なくらいにごめんを繰り返す姿に思わず笑いだしてしまった。
『大地さん。そこまでごめんって言われたら、なんかそれはそれでショックかも?なんて』
澤「あ、えっと、ごめん・・・あっ・・・」
『なんだか今の大地さん、山口くんみたい』
オロオロしながらまたごめんと繰り返す澤村先輩に、山口くんの姿を重ねて更に笑ってしまう。
道「澤村がそこまで慌てるのって珍しいよね」