第37章 その先にある未来
影「別に。逆に、俺が一緒に行ったら都合でも悪いのか?」
『そうじゃないけど・・・だっていつもなら影山は、あっという間にお弁当食べて寝てるから。じゃあ、今から一緒に行く?』
影「・・・おぅ」
自分のお弁当箱をリュックに押し込んで、行くならサッと行っちゃお?と席を立てば、影山もほぼ同時に席を立ち教室を出た。
『なんかさ、緊張するよね・・・3年生の教室に行くのってさ』
いくら部活の時間には顔合わせてるとは言っても、生活時間が違う3年生の教室が並ぶ廊下への階段は、一段足を運ぶ度に緊張度が変わる。
影「そうか?別に俺たちのと変わんなくね?」
表情ひとつ変えずに言う影山に、それは影山だからだよと返せば、怪訝そうな顔だけを返される。
影「お前、まだ・・・思ってんのか?」
『なにを?』
影「前に山口に言ってただろ」
『えっと、ごめん。唐突過ぎてなんの事か分かんないんだけど』
話していた内容といきなりかけ離れた影山の言葉にハテナマークを散らしながら足を止めれば、一瞬黙り混んだ影山が口を開く。
影「だから、俺たちは男だから試合に出れるとか、お前は女だからコートに立てない、とか」
『あぁ、その事ね・・・うん・・・そうかも。って言うより、それは事実だし?実際、男バレの大会なんだから私がどうやったってコートに立てるはずないし?』
影「お前は、いつまでそうやって自分の気持ちにカギ掛けて行くんだよ。バレーがやりたきゃ・・・やればいいだろ」
『私は別に、バレーはもうプレーヤーとしてじゃなくてもいいから。確かに女子バレー部のお手伝いをした時は楽しかったけど、でもね、私の居場所はここじゃないなって感じたし。これからはずっと、みんなと一緒に同じ道を進むって決めたの』
影「なら、分かった」
それっきり影山は何も言わず、3年生の教室までを歩き続けた。
影山が何を言いたかったのかは結局分からなかったけど・・・どうして急に、そんな事を聞いてきたんだろう。
バレーは辞める。
何度もそう話していたのに、まるで再確認するみたいな言い方だったし。
山口くんにあんな風に言ったのも、それは山口くんがこれから先も頑張って貰えるようにだったのに。
ただ、それだけだったのに・・・とも、言いきれないかもだけど。
なんか、モヤモヤするじゃん!
だいたいなんでイキナリそんな事を?