第37章 その先にある未来
そっと瞬きをした城戸さんが、少しだけ微笑んでオレを見る。
「決意表明・・・とか、なんかカッコ悪いかも・・・アハハ・・・」
ガシガシと頭を掻きながら言えば、城戸さんは微笑みを崩さずに首を振った。
『カッコ悪くなんてないよ。でも少し、びっくりしたのは、ホント』
「え?あ、えっと、ごめん・・・」
『謝らなくていいって。私がびっくりしたのは、山口君がそんな風に考えてたんだってこと。だって前の山口君はさ?どうせ自分は試合に出れないだろうから、とか、そんな感じでいたでしょ?なのに、これから先の事を考えて、自分で答えを出して行動してた。それってさ、カッコイイんじゃない?』
「そう、かな?」
戸惑いながらもそう返せば、城戸さんはそうだよ!と言って笑いながらオレの背中をポンッ!と叩いた。
『私も、頑張らなきゃ』
「え?」
『なんでもない。帰ろっか?あ、そうだ!嶋田さんから貰ったジュース飲みながら行こ?』
ガサガサと袋からパックジュースを出して、ひとつをオレにくれる。
『嶋田さんが、これくらいなら夕飯に響かないだろ?ってくれたの。いただきまーす・・・』
「い、いただきます」
同時にストローを刺して、歩きながらそれを飲む。
『山口君、あのさ?もし、私にも何か手伝えることがあったら遠慮なく言ってね?ボール拾いでも、なんでも』
「城戸さんにボール拾いとか頼めないよ!・・・部活じゃないんだし」
『そう?私は気にしないけど』
オレが気にするってば・・・だって、オレがあのサーブを練習する時、どれだけあちこちに飛ばすと思ってるの?
・・・なんて、言えないけど。
『あと、さっき聞いたことは私は誰にも言わないでおくね。誰かに話して広がって、いろいろと言われたら気が散るでしょ?だから、黙っとく』
「ありがとう、城戸さん」
それから後は、部活の事とか好きな食べ物は何か?とかたわいもない話をしながら歩いて、城戸さんの家の前まではあっという間に着いた。
『ごめんね、山口君が帰る方向とは反対側なのに』
「全然!オレも城戸さんといろんなこと話せて楽しかったし!えっと、しなしなになったポテト美味しいって聞いて、やった!仲間がいた!って」
『揚げたてカリカリもいいけど、そっちも美味しいもん!ね?』
笑いながら言う城戸さんに大きく頷いて、また笑われる。