第37章 その先にある未来
『嶋田さんと山口君が何か話してるって言うのは見たけど、何を話してるのかって言うのは聞いてないよ』
「そ、そうなの?」
『うん。なんだか2人が真剣な顔して話してたし、だからお店に入りにくいから、どうしよう、帰ろうかな?って迷ってたら山口君が出て来て』
「そっか・・・実は、さ」
『待って?今から山口君が言おうとしてる事、私が流れで聞いちゃっても平気なやつ?』
何となく感じたこころぐるしさにはなそうとすれば、城戸さんがそれに待ったをかけた。
『もし私が知らない方がいい事なら聞かない。でも、山口君自身が私に話してもいいって思える事なら聞く』
部活の時に見せる顔で、城戸さんがオレをじっと見つめる。
オレは・・・どうしたいんだろう。
これから始まる大会に、きっとオレはまた出れない。
だからこそ、その先にある未来に向けて・・・進もうと思って・・・
ー 山口君は今は他の1年みたいにすぐにコートに呼ばれないとしても、努力次第ではコートに立ってみんなと一緒にプレーする事が出来る。でも私は、どんなに頑張って努力した所で、いざ公式戦ともなれば絶対にコートに呼ばれる事なんてないから ー
前に城戸さんが言ってた事を、ハッキリと思い出す。
オレは、頑張っていたら・・・いつかきっと・・・
グッと手を握り、城戸さんへと体ごと視線を向ける。
「オレは、嶋田さんに・・・ジャンプフローターサーブを教えて貰えないかって、頼みに行ったんだ・・・」
『サーブ、を?』
「うん。今までの試合、オレはずっとベンチで見てた。きっとこれから始まる大会も、同じかも知れない。オレは日向みたいに凄いスパイクは打てないし、影山見たいなプレーも出来ない。ツッキーみたいなのだって・・・けど、これから先もずっとずっと試合に出れないのは嫌だから。だからオレにも何かひとつ、オレだけにしか出来ない物があったらって、思ったから」
『山口君・・・』
「もちろん、ちょっと練習したからってすぐにどうにかなる事じゃないのはわかってる。でも、何もしないでいるよりはずっといいから」
言い切ってから、大きく大きく息を吐く。
勢いで話した訳じゃないけど、話した事で上がっていく体温が酸素を欲しがってるみたいな、そんな感じで。
ゆっくりと、もう1回大きく深呼吸をした。
『なんか、凄い決意表明だったね』